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戦国策 / 宮他為燕使魏

宮他為燕使魏,魏不聽,留之數月。客謂魏王曰:「不聽燕使何也?」曰:「以其亂也。」對曰:「湯之伐桀,欲其亂也。故大亂者可得其埊,小亂者可得其寶。今燕客之言曰:『事苟可聽,雖盡寶、地,猶為之也。』王何為不見?」魏王說,因見燕客而遣之。

新字:宮他為燕使魏,魏不聴,留之数月。客謂魏王曰:「不聴燕使何也?」曰:「以其乱也。」対曰:「湯之伐桀,欲其乱也。故大乱者可得其埊,小乱者可得其宝。今燕客之言曰:『事苟可聴,雖尽宝、地,猶為之也。』王何為不見?」魏王説,因見燕客而遣之。

書き下し

宮他燕の爲に魏に使いするに、魏聽かず、之を留むること數月。客魏王に謂いて曰く、「燕の使いを聽かざるは何ぞや」と。曰く、「其の亂るるを以てなり」と。對えて曰く、「湯の桀を伐つや、其の亂れんことを欲す。故に大いに亂るる者は其の埊を得べく、小さく亂るる者は其の寶を得べし。今燕客の言に曰く、『事苟くも聽くべくんば、寶・地を盡くすと雖も、猶之を為さん』と。王何為れぞ見えざる」と。魏王說び、因りて燕客を見て之を遣す。

現代語訳

宮他が燕のために魏へ使者として赴いたが、魏はこれに応じず、数か月も留め置いた。ある食客が魏王に言った。「燕の使者に会おうとなさらないのはなぜですか。」魏王は「燕が混乱しているからだ」と答えた。食客は言った。「かつて湯王が桀を討ったのも、相手が乱れることを望んでのことでした。ですから大きく乱れた国からは領土を得ることができ、小さく乱れた国からは宝を得ることができるものです。いま燕からの使者はこう申しております。『事さえお聞き届けいただけるなら、宝であれ土地であれ、出し尽くしてでもそういたします』と。それなのに王はどうしてお会いにならないのですか。」魏王は喜び、そこで燕の使者に会って帰らせた。

解説

本章は、混乱する燕からの使者を魏王が門前払いしていたところ、食客の一言で態度を変えさせる短い逸話です。食客は、殷の湯王が夏の桀王を討った故事を引き、相手国の混乱はむしろ利益を得る好機であると説きます。乱れが大きければ領土を、小さければ財宝を得られるという打算的な見立てのうえで、燕の使者が「土地でも財宝でも差し出す」とまで言っていることを伝え、会わない理由はないと魏王を促します。混乱に陥った相手を避けるのではなく、むしろそこに機会を見出す視点は、いかにも戦国の権謀術数を体現した逸話といえます。現代においても、危機に直面した相手との関わりを一律に避けるのではなく、相手が何を差し出せる状態にあるかを冷静に見極める姿勢は、交渉の機会損失を防ぐ示唆となります。

この章句が説くこと

宮他魏王湯王交渉

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