戦国策 / 趙使机郝之秦
趙使机郝之秦,請相魏冉。宋突謂机郝曰:「秦不聽,樓緩必怨公。公不若陰辭樓子曰:『請無急秦王。』秦王見趙之相魏冉之不急也,且不聽公言也,是事而不成,魏冉固德公矣。」
新字:趙使机郝之秦,請相魏冉。宋突謂机郝曰:「秦不聴,楼緩必怨公。公不若陰辞楼子曰:『請無急秦王。』秦王見趙之相魏冉之不急也,且不聴公言也,是事而不成,魏冉固徳公矣。」
書き下し
趙、机郝をして秦に之かしめ、魏冉を相とせんことを請わしむ。宋突、机郝に謂いて曰く、「秦聴かざれば、楼緩必ず公を怨まん。公は陰かに楼子に辞して曰わんには如かず、『請う秦王を急にすること無かれ』と。秦王、趙の魏冉を相とするに急ならざるを見、且つ公の言を聴かざれば、是れ事にして成らずとも、魏冉固より公に徳とせん」と。
現代語訳
趙は机郝を秦に使者として派遣し、魏冉を秦の宰相にするよう求めさせた。宋突は机郝に言った。「もし秦がこれを聞き入れなければ、楼緩はきっとあなたを恨むでしょう。あなたはひそかに楼緩にこう断っておく方がよいのです。『どうか秦王をせき立てないでください』と。秦王が、趙が魏冉を宰相にすることをそれほど急いていないと見て、かつあなたの言葉も強く求めていないと分かれば、たとえこの話がまとまらなくても、魏冉はもとよりあなたに恩義を感じるでしょう。」
解説
この章は、外交交渉が不成立に終わった場合の保険のかけ方を描いた短い逸話です。趙の使者・机郝は魏冉を秦の宰相に推す使命を帯びますが、参謀の宋突は、交渉相手の楼緩の恨みを買わぬよう、あらかじめ「急がなくてよい」と一言添えておく処世術を助言します。結果がどう転んでも角が立たず、むしろ推薦した相手(魏冉)からの信頼だけは確保できるという、失敗を見越した保険的な発言の使い方を示しています。外交や交渉の場面に限らず、依頼や提案が通らなかった時の関係修復まで見越して言葉を選ぶ姿勢は、現代のビジネス交渉でも参考になる知恵です。
この章句が説くこと
机郝魏冉楼緩外交交渉処世術
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