戦国策 / 韓公叔與幾瑟爭國中庶子強謂太子
韓公叔與幾瑟爭國。中庶子強謂太子曰:「不若及齊師未入,急擊公叔。」太子曰:「不可。戰之於國中必分。」對曰:「事不成,身必危,尚何足以圖國之全為?」太子弗聽,齊師果入,太子出走。
新字:韓公叔与幾瑟争国。中庶子強謂太子曰:「不若及斉師未入,急擊公叔。」太子曰:「不可。戦之於国中必分。」対曰:「事不成,身必危,尚何足以図国之全為?」太子弗聴,斉師果入,太子出走。
書き下し
韓の公叔幾瑟と國を爭う。中庶子強太子に謂いて曰く、「齊師の未だ入らざるに及びて、急に公叔を擊つに若かず。」太子曰く、「不可なり。之を國中に戰わば必ず分かれん。」對えて曰く、「事成らずんば、身必ず危うし、尚何ぞ以て國の全きを圖るに足らんや。」太子聽かず、齊師果たして入り、太子出でて走る。
現代語訳
韓では公叔と幾瑟が国の跡目を争っていた。中庶子(太子の側近)の強は太子(幾瑟)に進言した。「斉の軍がまだ国内に入っていないうちに、急ぎ公叔を討つべきです。」太子は答えた。「それはいけない。国の内部で戦えば、国が必ず分裂してしまう。」強は重ねて言った。「もし事が成らなければ、あなた自身の身が危うくなります。そうなれば、国の安泰などどうして図れましょうか。」太子はこの進言を聞き入れなかった。果たして斉の軍は国内に入り込み、太子は国外へ逃げ出す羽目になった。
解説
この章は、内乱の芽を早期に摘むべきだという側近の進言を、国の分裂を恐れて退けた太子が、結局は外国軍の介入を招き敗走するという結末を描いています。中庶子強は「行動しないこと自体のリスク」を的確に指摘しましたが、太子は目先の混乱を避けることを優先し、決断を先延ばしにしてしまいました。危機に際して「動けば国が割れる」という懸念にとらわれるあまり、「動かなければ第三者に付け込まれる」というより大きなリスクを見落とす典型例です。決断を先送りすることそのものが一つの選択であり、しばしば最悪の結果を招くことを、この短い逸話は端的に教えてくれます。
この章句が説くこと
決断の先送り内紛幾瑟公叔リスク管理
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