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戦国策 / 鄭彊載八百金入秦

鄭彊載八百金入秦,請以伐韓。泠向謂鄭彊曰:「公以八百金請伐人之與國,秦必不聽公。公不如令秦王疑公叔。」鄭彊曰:「何如?」曰:「公叔之攻楚也,以幾瑟之存焉,故言先楚也。今已令楚王奉幾瑟以車百乘居陽翟,令昭獻轉而與之處,旬有餘,彼已覺。而幾瑟,公叔之讎也;而昭獻,公叔之人也。秦王聞之,必疑公叔為楚也。」

新字:鄭彊載八百金入秦,請以伐韓。泠向謂鄭彊曰:「公以八百金請伐人之与国,秦必不聴公。公不如令秦王疑公叔。」鄭彊曰:「何如?」曰:「公叔之攻楚也,以幾瑟之存焉,故言先楚也。今已令楚王奉幾瑟以車百乗居陽翟,令昭献転而与之処,旬有余,彼已覚。而幾瑟,公叔之讎也;而昭献,公叔之人也。秦王聞之,必疑公叔為楚也。」

書き下し

鄭彊八百金を載せて秦に入り、請いて以て韓を伐たしめんとす。泠向、鄭彊に謂いて曰く、「公八百金を以て人の与国を伐たんことを請うも、秦必ず公に聴かじ。公は秦王をして公叔を疑わしむるに如かず。」鄭彊曰く、「何如。」曰く、「公叔の楚を攻むるや、幾瑟の存するを以て、故に楚を先にすと言うなり。今已に楚王をして幾瑟を奉じて車百乗を以て陽翟に居らしめ、昭献をして転じて之と処らしめ、旬有余、彼已に覚らん。而して幾瑟は、公叔の讎なり。而して昭献は、公叔の人なり。秦王之を聞かば、必ず公叔を疑いて楚の為にすと為さん。」

現代語訳

鄭彊が八百金を車に積んで秦に入り、その金をもって韓を討伐するよう秦に求めようとしていた。泠向が鄭彊に言った。「あなたが八百金をもって人(韓)の同盟国を討伐するよう求めても、秦は必ずあなたの言うことを聞き入れないでしょう。それよりも、秦王に公叔への疑念を抱かせる方がよろしいでしょう。」鄭彊は言った。「どうすればよいのか。」泠向は言った。「公叔がかつて楚を攻めたのは、幾瑟という人物が楚に存命であったためで、そのために『まず楚を』と唱えていたのです。いますでに楚王に命じて、幾瑟に車百乗をもたせて陽翟に住まわせ、昭献を差し向けてともに過ごさせるようにしてあります。十日あまりもすれば、公叔はもう気づくでしょう。そして幾瑟は公叔の仇敵であり、昭献は公叔に近しい人物です。秦王がこの事の次第を聞けば、必ず公叔が楚のために動いているのではないかと疑うようになりましょう。」

解説

鄭彊が莫大な金をもって秦に赴き、韓の同盟国を攻めるよう働きかけようとしていたところ、泠向はその直接的なやり方では秦は動かないと見抜き、代わりに秦国内の実力者・公叔に疑念を抱かせる搦め手の策を提案します。公叔の政敵である幾瑟と、公叔に近い人物である昭献とを、あえて同じ場所に住まわせておくことで、傍目には公叔と楚が何やら通じているかのように見える状況を作り出し、それが秦王の耳に入れば公叔への不信を招く、という仕組みです。事実を捏造するのではなく、既存の人間関係の組み合わせを操作して誤解を誘発させるという、極めて巧妙な情報操作の手法が描かれています。正面から要求を通そうとしてうまくいかない場合に、相手陣営内部の疑心暗鬼を利用して間接的に目的を達成するという発想は、現代の競争環境における間接的な影響力行使の一例として読むことができます。

この章句が説くこと

鄭彊泠向公叔幾瑟離間の策

この一句を、あなたの毎日に。

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