戦国策 / 張儀謂齊王
張儀謂齊王曰:「王不如資韓朋,與之逐張儀於魏。魏因相犀首,因以齊、魏廢韓朋,而相公叔以伐秦。公仲聞之,必不入於齊。據公於魏,是公無患。」
新字:張儀謂斉王曰:「王不如資韓朋,与之逐張儀於魏。魏因相犀首,因以斉、魏廃韓朋,而相公叔以伐秦。公仲聞之,必不入於斉。拠公於魏,是公無患。」
書き下し
張儀、斉王に謂いて曰く、「王は韓朋を資けて、之と与に張儀を魏より逐うに如かず。魏因りて犀首を相とせん、因りて斉・魏を以て韓朋を廃し、公叔を相として秦を伐たしめん。公仲之を聞かば、必ず斉に入らず。公を魏に拠らしめば、是れ公患い無し。」
現代語訳
張儀が斉王に言った。「王は韓朋を後押しして、彼とともに張儀を魏の宰相の座から追い出させるのが得策です。そうすれば魏はそれによって犀首を宰相に立てるでしょう。そこで斉と魏の力を借りて今度は韓朋を退け、公叔を宰相に立てて秦を討たせるのです。公仲がこれを聞けば、決して斉には近づかないでしょう。こうして公(公叔)を魏で確固たる地位につかせれば、公には憂いがなくなります。」
解説
この話は、魏の宰相の座をめぐる張儀・犀首(公孫衍)・韓朋・公叔・公仲といった当時の実力者たちの複雑な駆け引きを、断片的に伝える短文です。張儀は斉王に対し、まず韓朋を利用して自分自身をも含む政敵を魏の宰相の座から追い落とし、次には犀首を、さらには韓朋自身をも退けて最終的に公叔を宰相に据え、秦攻撃へと導くという、幾重にも入り組んだ人事工作を提案しています。文脈が簡略で正確な経緯を復元しきれない部分もありますが、一つの地位をめぐって複数の勢力が段階的に他者を利用しては切り捨てていく政治力学の縮図がここにはあります。目先の協力者が、次の段階では排除すべき相手に転じるという冷徹な計算は、戦国期の権力闘争の常でした。現代の組織内政治においても、味方と敵の境界が固定的でなく、局面ごとに組み替えられるという現実を、この逸話は端的に示しています。
この章句が説くこと
張儀犀首公叔公仲宰相人事の駆け引き