戦国策 / 田需貴於魏王
田需貴於魏王,惠子曰:「子必善左右。今夫楊,橫樹之則生,倒樹之則生,折而樹之又生。然使十人樹楊,一人拔之,則無生楊矣。故以十人之眾,樹易生之物,然而不勝一人者,何也?樹之難而去之易也。今子雖自樹於王,而欲去子者眾,則子必危矣。」
新字:田需貴於魏王,恵子曰:「子必善左右。今夫楊,横樹之則生,倒樹之則生,折而樹之又生。然使十人樹楊,一人抜之,則無生楊矣。故以十人之眾,樹易生之物,然而不勝一人者,何也?樹之難而去之易也。今子雖自樹於王,而欲去子者眾,則子必危矣。」
書き下し
田需魏王に貴(たっと)ばる。惠子曰く、「子必ず左右を善くせよ。今夫れ楊は、横たえて之を樹(う)うれば則ち生じ、倒(さかしま)に之を樹うれば則ち生じ、折りて之を樹うれば又生ず。然れども十人をして楊を樹えしめ、一人之を抜かば、則ち生ずる楊無からん。故に十人の衆を以て、生じ易きの物を樹うるに、然れども一人に勝たざる者は、何ぞや。之を樹うるは難くして之を去るは易ければなり。今子自ら王に樹うと雖も、而れども子を去らんと欲する者衆ければ、則ち子必ず危うし」と。
現代語訳
田需が魏王に重んじられるようになった。惠子は彼にこう言った。「あなたは必ず周囲の者たちを大切にしなければならない。そもそも楊の木は、横に植えても生え、逆さまに植えても生え、折って挿しても生えるものだ。しかし十人が楊を植えても、一人がそれを引き抜いてしまえば、生きた楊は一本もなくなってしまう。十人がかりで、あれほど生えやすい木を植えたのに、たった一人にかなわないのはなぜか。植えるのは難しく、抜き去るのはたやすいからだ。今あなたは自ら王のもとで地歩を築いているとはいえ、あなたを陥れようとする者が多ければ、あなたの身は必ず危うくなる。」
解説
権力の座に就いたばかりの田需に対し、惠子が「築くのは難しく、壊すのはたやすい」という楊の木の比喩を用いて、周囲との関係づくりの重要性を説く話です。どれほど王の信任を得ても、それを妬み陥れようとする者が多数いれば、地位はあっという間に覆されてしまう、という指摘は、戦国期の宮廷政治の実態をよく捉えています。一人の後ろ盾だけに頼るのではなく、周囲の人間関係全体を良好に保つことこそが地位を長く保つ条件だという教えは、現代の組織における人間関係のマネジメントにも通じます。実力や上司の評価だけでなく、周囲からの信頼や協力を積み重ねることの大切さを、簡潔な比喩で伝えている点が印象的です。
この章句が説くこと
恵子田需処世訓人間関係比喩
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