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戦国策 / 秦伐宜陽

秦伐宜陽。楚王謂陳軫曰:「寡人聞韓侈巧士也,習諸侯事,殆能自免也。為其必免,吾欲先據之以加德焉。」陳軫對曰:「舍之,王勿據也。以韓侈之知,於此困矣。今山澤之獸,無黠於麋。麋知獵者張罔,前而驅己也,因還走而冒人,至數。獵者知其詐,偽舉罔而進之,麋因得矣。今諸侯明知此多詐,偽舉罔而進者必眾矣。舍之,王勿據也。韓侈之知,於此困矣。」楚王聽之,宜陽果拔。陳軫先知之也。

新字:秦伐宜陽。楚王謂陳軫曰:「寡人聞韓侈巧士也,習諸侯事,殆能自免也。為其必免,吾欲先拠之以加徳焉。」陳軫対曰:「舎之,王勿拠也。以韓侈之知,於此困矣。今山沢之獣,無黠於麋。麋知猟者張罔,前而駆己也,因還走而冒人,至数。猟者知其詐,偽舉罔而進之,麋因得矣。今諸侯明知此多詐,偽舉罔而進者必眾矣。舎之,王勿拠也。韓侈之知,於此困矣。」楚王聴之,宜陽果抜。陳軫先知之也。

書き下し

秦、宜陽を伐つ。楚王、陳軫に謂いて曰く、「寡人聞く、韓侈は巧士なり、諸侯の事に習い、殆ど自ら免るる能わん。其の必ず免れんが為に、吾之に先んじて拠りて以て徳を加えんと欲す。」陳軫対えて曰く、「之を舎て、王拠ること勿かれ。韓侈の知を以てするも、此に於て困しまん。今、山沢の獣は、麋より黠なるは無し。麋、猟者の罔を張るを知りて、前だちて己を駆るに因り、還り走りて人に冒すこと、数に至る。猟者其の詐を知り、偽りて罔を挙げて之に進むれば、麋因りて得らる。今、諸侯明らかに此の多詐を知り、偽りて罔を挙げて進む者必ず衆からん。之を舎て、王拠ること勿かれ。韓侈の知は、此に於て困しまん。」楚王之を聴く、宜陽果たして抜かる。陳軫先に之を知れるなり。

現代語訳

秦が宜陽を攻めた。楚王が陳軫に言った。「私が聞くところでは、韓侈は巧みな人物で、諸侯の間の駆け引きに通じており、ほとんど自分の身を(戦禍から)免れさせることができるという。彼が必ず免れるであろうから、私は先手を打ってその立場に取り入り、恩を売っておきたい。」陳軫は答えた。「それはおやめください、王は取り入る必要はありません。韓侈の知恵をもってしても、今回はこれで行き詰まるでしょう。たとえば山沢の獣で、麋(おおしか)ほど狡猾なものはありません。麋は猟師が網を張っているのを知ると、あえて前に出て自分を追わせるように仕向け、引き返して走って人に飛びかかることを何度も繰り返します。猟師はその手口を見抜き、わざと網を上げたふりをして麋を誘い込むと、麋はそれでとうとう捕らえられてしまいます。今、諸侯もまたこの(韓侈のような)手練手管の多さを知っていますから、わざと網を上げたふりをして誘い込もうとする者が必ず多くいるはずです。それはおやめください、王は取り入る必要はありません。韓侈の知恵は、今回はこれで行き詰まるでしょう。」楚王はこの言葉に従った。果たして宜陽は陥落した。陳軫はあらかじめこれを見通していたのである。

解説

秦が韓の宜陽を攻めた際、楚王は「巧みに立ち回る韓侈は必ず難を逃れるだろうから、今のうちに恩を売っておこう」と考えましたが、陳軫はこれを制止しました。陳軫は、猟師に何度も同じ手口で網をかいくぐってきた麋(おおしか)が、最後には猟師にその手口を見切られて捕らえられる譬えを用い、韓侈のような「毎回うまく立ち回る者」は、その巧妙さゆえにかえって相手方にも見切られやすくなると説きました。結果、陳軫の見立て通り宜陽は陥落し、韓侈への肩入れは無駄になったことが示唆されています。目先の評判や過去の実績だけで人を見込んで先回りの投資をすることの危うさ、そして「うまくいき続けている手口」ほど相手にも読まれつつあるかもしれないという警戒心の大切さを教えてくれる話です。

この章句が説くこと

陳軫楚王韓侈宜陽先見の明

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