戦国策 / 郢人有獄三年不決
郢人有獄三年不決者,故令請其宅,以卜其罪。客因為之謂昭奚恤曰:「郢人某氏之宅,臣願之。」昭奚恤曰:「郢人某氏,不當服罪,故其宅不得。」客辭而去。昭奚恤已而悔之,因謂客曰:「奚恤得事公,公何為以故與奚恤?」客曰:「非用故也。」曰:「謂而不得,有說色,非故如何也?」
新字:郢人有獄三年不決者,故令請其宅,以卜其罪。客因為之謂昭奚恤曰:「郢人某氏之宅,臣願之。」昭奚恤曰:「郢人某氏,不当服罪,故其宅不得。」客辞而去。昭奚恤已而悔之,因謂客曰:「奚恤得事公,公何為以故与奚恤?」客曰:「非用故也。」曰:「謂而不得,有説色,非故如何也?」
書き下し
郢人に獄あり三年決せざる者、故に其の宅を請いて、以て其の罪を卜す。客因りて之が為に昭奚恤に謂いて曰わく、「郢人某氏の宅、臣之を願う。」昭奚恤曰わく、「郢人某氏は、罪に服すに当たらず、故に其の宅得ず。」客辞して去る。昭奚恤已にして之を悔い、因りて客に謂いて曰わく、「奚恤公に事うるを得たり、公何を為してか故を以て奚恤に与うる。」客曰わく、「故を用うるに非ざるなり。」曰わく、「謂いて得ずして、説色有り、故に非ずして如何せん。」
現代語訳
郢の人に、三年経っても裁決の下らない訴訟事件があった。そこである者が、その者の屋敷を手に入れることで、その罪の行方を占おうとした。客はその人のために昭奚恤にこう言った。「郢の某氏の屋敷を、私はいただきたく思います。」昭奚恤は「郢の某氏は罪に服すべき者ではない、だからその屋敷は手に入らない」と答えた。客は辞去した。昭奚恤は後になってそれを悔い、客にこう言った。「私はあなたにお仕えする機会を得ていたのに、あなたはなぜわざと私に、あの願いをおっしゃったのですか。」客は「わざとではありません」と答えた。昭奚恤は言った。「頼んでも聞き入れられなかったのに、あなたは不満げな顔色をなさった。わざとでないとしたら、何だと言うのですか。」
解説
三年も裁決の下らない訴訟の行方を占うため、ある客が郢の被告の屋敷を昭奚恤に求めた小話です。昭奚恤が「その者は無罪だから屋敷は渡せない」と断ると、客は不満げな表情を見せ、それを昭奚恤に「わざとらしい」と見抜かれています。表向きの言葉だけでなく、表情や態度から相手の真意を読み取るという観察眼が主題です。裁判の行方という重大事を、間接的な依頼への反応で探ろうとする手法は、現代の交渉や採用面接などで「本音を探る質問」を投げかける手法にも通じる観察の技術と言えるでしょう。
この章句が説くこと
昭奚恤郢訴訟観察眼楚
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