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戦国策 / 江乙為魏使於楚

江乙為魏使於楚,謂楚王曰:「臣入竟,聞楚之俗,不蔽人之善,不言人之惡,誠有之乎?」王曰:「誠有之。」江乙曰:「然則白公之亂,得無遂乎?誠如是,臣等之罪免矣。」楚王曰:「何也?」江乙曰:「州侯相楚,貴甚矣而主斷,左右俱曰『無有』,如出一口矣。」

新字:江乙為魏使於楚,謂楚王曰:「臣入竟,聞楚之俗,不蔽人之善,不言人之悪,誠有之乎?」王曰:「誠有之。」江乙曰:「然則白公之乱,得無遂乎?誠如是,臣等之罪免矣。」楚王曰:「何也?」江乙曰:「州侯相楚,貴甚矣而主断,左右俱曰『無有』,如出一口矣。」

書き下し

江乙、魏の為に楚に使いす。楚王に謂いて曰わく、「臣竟に入りて、楚の俗を聞くに、人の善を蔽わず、人の悪を言わずと。誠に之有りや。」王曰わく、「誠に之有り。」江乙曰わく、「然らば則ち白公の乱、得た遂げざらんか。誠に是くの如くんば、臣等の罪免れん。」楚王曰わく、「何ぞや。」江乙曰わく、「州侯楚に相たり、貴きこと甚だしくして主断す、左右倶に『有る無し』と曰い、一口より出づるが如し。」

現代語訳

江乙は魏のために使者として楚に赴いた。楚王に言った。「私が楚の国境に入って聞いたところでは、楚の風習として、人の美点を覆い隠さず、人の悪口も言わないということですが、本当にそうなのでしょうか。」王は「本当にそうだ」と答えた。江乙は言った。「それならば、白公の乱はきっと起こらなかったはずでしょう。もし本当にそうであるならば、乱を防げなかった私どものような者の罪も免れることになりましょう。」楚王は「どういうことか」と尋ねた。江乙は答えた。「州侯が楚の宰相となり、非常に権勢を振るってひとりで物事を決めていますが、側近たちは皆口をそろえて『そのような事実はない』と言い、まるで一つの口から出ているかのようです。」

解説

魏の使者・江乙が「楚の風習は人の悪を語らない」という美名を逆手に取り、州侯の専横を側近たちが口をそろえて否定する様子を指摘し、事実が覆い隠されている実態を暴いた話です。楚の白公勝の乱を引き合いに出し、「誰も悪を語らない」体制そのものが危険を招くと示唆しています。全員が同じ言葉で否定する状況は、かえって不自然さの証拠になり得るという観察眼は、現代の組織で「異口同音の否定」が隠蔽のサインとなりうることにも通じます。使者という立場を利用し、相手国の内情を探る外交的な駆け引きとしても興味深い一篇です。

この章句が説くこと

江乙州侯白公の乱言論統制

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