戦国策 / 秦一・張儀欲假秦兵以救魏
張儀欲假秦兵以救魏。左成謂甘茂曰:「子不予之。魏不反秦兵,張子不反秦。魏若反秦兵,張子得志於魏,不敢反於秦矣。張子不去秦,張子必高子。」
新字:張儀欲仮秦兵以救魏。左成謂甘茂曰:「子不予之。魏不反秦兵,張子不反秦。魏若反秦兵,張子得志於魏,不敢反於秦矣。張子不去秦,張子必高子。」
書き下し
張儀秦兵を假りて以て魏を救わんと欲す。左成甘茂に謂いて曰わく、「子之を予うる勿かれ。魏秦兵を反さずんば、張子秦に反らず。魏若し秦兵を反さば、張子魏に志を得て、敢えて秦に反らざらん。張子秦を去らずんば、張子必ず子を高くせん。」
現代語訳
張儀は秦の兵を借りて魏を救おうとした。左成が甘茂に言った。「あなたはそれを貸してはなりません。魏が秦の兵を返さなければ、張儀は秦に戻ってきません。もし魏が秦の兵を返せば、張儀は魏で志を遂げたことになり、あえて秦に戻ろうとはしないでしょう。張儀が秦を去らずにいれば、張儀はきっとあなたを重んじるようになります。」
解説
この短い章は、秦の兵を魏に貸すかどうかという一見単純な軍事協力の判断の裏に、張儀という有力政治家の去就をめぐる計算が絡んでいたことを示しています。左成は、兵を貸せば張儀が魏で成功して秦に戻らなくなり、逆に貸さなければ張儀は成果を出せず秦に留まらざるを得なくなる、という二択の構造を甘茂に説き、いずれにせよ自分たちに有利な結果を引き出せると助言しています。実際の軍事支援の是非よりも、それによってライバルの政治的立場がどう動くかを読む視点が特徴的です。現代の組織内でも、ある協力や支援の可否を決める際、表向きの目的だけでなく、それが特定の人物の社内外での立場や発言力にどう影響するかまで見据えて判断する視点は、政治的な駆け引きの機微を理解するうえで参考になります。
この章句が説くこと
張儀甘茂左成魏政治力学
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