呂氏春秋 / 離謂④
子產治鄭,鄧析務難之,與民之有獄者約,大獄一衣,小獄襦袴。民之獻衣襦袴而學訟者,不可勝數。以非為是,以是為非,是非無度,而可與不可日變。所欲勝因勝,所欲罪因罪。鄭國大亂,民口讙譁。子產患之,於是殺鄧析而戮之,民心乃服,是非乃定,法律乃行。今世之人,多欲治其國,而莫之誅鄧析之類,此所以欲治而愈亂也。
新字:子産治鄭,鄧析務難之,与民之有獄者約,大獄一衣,小獄襦袴。民之献衣襦袴而学訟者,不可勝数。以非為是,以是為非,是非無度,而可与不可日変。所欲勝因勝,所欲罪因罪。鄭国大乱,民口讙譁。子産患之,於是殺鄧析而戮之,民心乃服,是非乃定,法律乃行。今世之人,多欲治其国,而莫之誅鄧析之類,此所以欲治而愈乱也。
書き下し
子產、鄭を治め、鄧析務めて之を難じ、民の獄有る者と約す。大獄は一衣、小獄は襦袴なり。民の衣襦袴を獻じて訟を學ぶ者、勝げて數う可からず。非を以て是と爲し、是を以て非と爲す。是非に度無くして、可と不可と日に變ず。勝たしめんと欲する所は因りて勝ち、罪せんと欲する所は因りて罪す。鄭國大いに亂れ、民口讙譁す。子產之を患う。是に於て鄧析を殺して之を戮す。民心乃ち服し、是非乃ち定まり、法律乃ち行わる。今世の人、多く其の國を治めんと欲して、而も鄧析の類を誅すること莫し。此れ治を欲して愈々亂るる所以なり。
現代語訳
子産が鄭を治めると、鄧析はしきりにこれに難癖をつけ、訴訟を抱える民と契約を結んだ。大きな訴訟なら上着一枚、小さな訴訟なら下着と袴を報酬とした。上着や下着袴を差し出して訴訟の弁を学ぶ民は数え切れなかった。非を是とし、是を非とし、是非に基準がなく、可と不可が日々変わった。勝たせたい者は勝たせ、罪に落としたい者は罪に落とした。鄭の国は大いに乱れ、民の口がやかましく騒いだ。子産はこれを憂え、そこで鄧析を殺して見せしめにした。すると民心が服し、是非が定まり、法律が行われるようになった。今の世の人は、多くが国を治めたいと望みながら、鄧析のような輩を誅することがない。これが治めようとしてかえって乱れる理由である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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呂氏春秋・離謂②鄭國、相縣くるに書を以てする者多し。子產令して書を縣くること無からしむ。鄧析之を致す。子產令して書を致すこと無からしむ。鄧析之を倚す。令窮まること無ければ、則ち鄧析之に應ずるも亦た窮まること無し。是れ可と不可と辨ずること無きなり。可と不可と辨ずること無くして、以て賞罰すれば、其の罰愈々疾く、其の亂愈々疾し。此れ國を爲むるの禁なり。故に辨なれども理に當らざれば則ち偽なり。知なれども理に當らざれば則ち詐なり。詐偽の民は、先王の誅する所なり。理なる者は、是非の宗なり。
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『列子』力命篇鄧析は兩可の說を操り、無窮の辭を設く。子產の執政に當たり、竹刑を作る。鄭國之を用い、數ば子產の治を難ず。子產之に屈す。子產執えて之を戮し、俄かにして之を誅す。然らば則ち子產は能く竹刑を用いしに非ず、用いざるを得ざるなり。鄧析は能く子產を屈せしめしに非ず、屈せしめざるを得ざるなり。子產は能く鄧析を誅せしに非ず、誅せざるを得ざるなり。
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呂氏春秋・離謂③洧水甚だ大にして、鄭の富人に溺るる者有り。人、其の死者を得たり。富人之を贖わんことを請う。其の人金を求むること甚だ多し。以て鄧析に告ぐ。鄧析曰く、「之を安んぜよ。人必ず之を賣ること莫からん。」死を得たる者之を患う。以て鄧析に告ぐ。鄧析又之に答えて曰く、「之を安んぜよ。此れ必ず更に買う所無からん。」夫れ忠臣を傷つくる者は、此に似たること有るなり。夫れ功無くして民を得ざれば、則ち其れ功無くして民を得ざるを以て之を傷つく。功有りて民を得れば、則ち又其の功有りて民を得るを以て之を傷つく。人主の度無き者、以て此を知ること無し。豈に悲しからずや。比干・萇弘は此を以て死し、箕子・商容は此を以て窮し、周公・召公は此を以て疑われ、范蠡・子胥は此を以て流さる。死生存亡安危は、此れ從り生ず。
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『列子』楊朱篇子產忙然として以て之に應うる無し。他日、以て鄧析に告ぐ。鄧析曰く、子は真人と居りて知らざるなり。孰か子を智者と謂わんや。鄭國の治まるは偶々なるのみ。子の功に非ざるなり、と。
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『列子』楊朱篇子產日夜以て戚と爲し、密かに鄧析に造りて之を謀りて曰く、僑聞く、身を治めて以て家に及び、家を治めて以て國に及ぶ、と。此れ近きより遠きに至るを言うなり。僑は國を爲めては則ち治まれり。而るに家は則ち亂る。其の道逆なるか。將た奚の方ありてか二子を救わん。子其れ之を詔せ、と。鄧析曰く、吾之を怪しむこと久し。未だ敢えて先には言わず。子奚ぞ其の治に時せざるか。喩すに性命の重きを以てし、誘うに禮義の尊きを以てせざるか、と。
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呂氏春秋・下賢⑤子産、鄭に相たるや、往きて壺丘子林を見る。其の弟子と坐するに必ず年を以てす。是れ其の相を門に倚くなり。夫れ萬乘の國に相として能く之を遺き、志を謀り行いを論じ、而して心を以て人と相索むるは、其れ唯だ子産のみか。故に鄭に相たること十八年、三人を刑し、二人を殺すのみ。桃李の行に垂るる者も、之を援くもの莫く、錐刀の道に遺ちたる者も、之を舉ぐるもの莫きなり。