呂氏春秋 / 孟冬⑤
是月也,工師效功。陳祭器,按度程,無或作為淫巧,以蕩上心,必功致為上。物勒工名,以考其誠;工有不當,必行其罪,以窮其情。
新字:是月也,工師効功。陳祭器,按度程,無或作為淫巧,以蕩上心,必功致為上。物勒工名,以考其誠;工有不当,必行其罪,以窮其情。
書き下し
是の月や、工師、功を效し、祭器を陳ね、度程を按じ、淫巧を作為して、以て上の心を蕩かす或ること無からしめ、必ず功致を上と為す。物は工名を勒し、其の誠を考え、工に當らざる有れば、必ず其の罪を行い、以て其の情を窮む。
現代語訳
この月には、工人の長が仕事の成果を報告する。祭器を並べ、規格の寸法を検査し、みだりに手の込んだ細工をして上に立つ者の心を惑わすことがないようにさせ、必ず堅牢さを第一とする。品物には作った工人の名を刻み、その真心を調べ、仕事に不適切な点があれば必ず罰し、その実情を追及する。
解説
工人が成果を報告し、製品の品質と規格を厳しく検査する制度が説かれます。過度に華美な細工で上位者の心を惑わすことを戒め、実用と堅牢さを重んじる点に、質実を尊ぶ価値観が表れています。とりわけ製品に作り手の名を刻ませ、責任の所在を明らかにする「物勒工名」は、品質管理と責任追及の古典的な仕組みとして知られます。現代の製造業における品質保証やトレーサビリティ、責任の明確化に直結する発想であり、二千年以上前に体系化されていた点が注目されます。
この章句が説くこと
工師物勒工名品質管理淫巧功致責任追及
関連する章句
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呂氏春秋・季春⑥是の月や、工師に命じ、百工に令して、五庫の量を審らかにし、金鐵・皮革筋・角齒・羽箭幹・脂膠丹漆、良からざるもの或こと無からしむ。百工咸理むるや、工を監して日々號し、時に悖ること無からしむ。淫巧を作為して、以て上の心を蕩たらしむること或ること無からしむ。
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呂氏春秋・仲冬②是の月や、閹尹に命じて、宮令を申ね、門閭を審らかにし、房室を謹み、必ず重閉せしめ、婦事を省き、淫するを得ること毋からしめ、貴戚近習有りと雖も、禁ぜざること有る無からしむ。乃ち大酋に命じて、秫稻必ず齊え、麴糱必ず時にし、湛饎必ず潔く、水泉必ず香しく、陶器必ず良に、火齊必ず得しむ。六物を兼ね用うるや、大酋之を監して、差忒有ること無からしむ。天子乃ち有司に命じて、四海の大川・名原・淵澤・井泉に祈祀せしむ。
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呂氏春秋・季夏④是の月や、婦官に命じて采を染めしむ。黼黻文章、必ず法故を以てして、差忒或る無く、黑黃蒼赤、質良ならざること莫く、敢て偽詐すること勿らしむ。以て郊廟祭祀の服に給し、以て旗章を為り、以て貴賤等級の度を別つ。
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呂氏春秋・孟冬⑥是の月や、大いに飲蒸し、天子乃ち來年を天宗に祈る。大いに割きて、公社及び門閭を祠り、先祖五祀を饗し、農夫を勞い、以て之を休息せしむ。天子乃ち將率に命じて、武を講じ、射御を肄い、力を角わしむ。
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呂氏春秋・處方⑤今、人此に有り、擅に行いを矯めば則ち國家を免れしめ、輕重を利すれば則ち衡石の如く、方圜を為せば則ち規矩の若くす。此れ則ち工なり巧なり。而れども法るに足らず。法なる者は、衆の同じくする所なり。賢不肖の其の力を以うる所なり。謀の用う可からざるに出で、事同じくす可からざるに出づるは、此れ先王の舍つる所なり。
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呂氏春秋・分職③今、客を召く者、酒酣にして、歌舞鼓瑟吹竽す。明日己を樂しませし者を拝せずして、主人を拜するは、主人之を使えばなり。先王の功名を立つるは、此に似たる有り。衆能と衆賢とを使い、功名大いに世に立つ。之を佐くる者に予えずして、其の主に予うるは、其の主之を使えばなり。之を譬うるに、宮室を為るが若し。必ず巧匠に任ずるは、奚の故ぞ。曰く、「匠、巧みならざれば、則ち宮室善からざればなり。」夫れ國は、重物なり。其れ善からざるや、豈に特に宮室のみならんや。巧匠の宮室を為るに、圓を為るには必ず規を以てし、方を為るには必ず矩を以てし、平直を為るには必ず准繩を以てす。功已に就れば、規矩繩墨を知らずして、巧匠を賞す。宮室已に成れば、巧匠を知らずして、皆曰く、「善いかな。此れ某君某王の宮室なり。」此れ察せざる可からざるなり。人主の主道に通ぜざる者は則ち然らず。自ら之を為すは則ち能わず、賢者に任ずるは則ち之を惡み、不肖者と之を議す。此れ功名の傷るる所以にして、國家の危うき所以なり。