呂氏春秋 / 盡數③
流水不腐,戶樞不螻,動也。形氣亦然,形不動則精不流,精不流則氣鬱。鬱處頭則為腫為風,處耳則為挶為聾,處目則為䁾為盲,處鼻則為鼽為窒,處腹則為張為府,處足則為痿為蹶。
新字:流水不腐,戸枢不螻,動也。形気亦然,形不動則精不流,精不流則気鬱。鬱処頭則為腫為風,処耳則為挶為聾,処目則為䁾為盲,処鼻則為鼽為窒,処腹則為張為府,処足則為痿為蹶。
書き下し
流水は腐らず、戶樞螻せざるは、動けばなり。形氣も亦た然り。形動かざれば則ち精流れず。精流れざれば則ち氣鬱す。鬱、頭に處れば則ち腫を為し風を為す。耳に處れば則ち挶を為し聾を為す。目に處れば則ち䁾を為し盲を為す。鼻に處れば則ち鼽を為し窒を為す。腹に處れば則ち張を為し府を為す。足に處れば則ち痿を為し蹶を為す。
現代語訳
流れる水は腐らず、扉の回転軸は虫に食われて朽ちない。動いているからだ。体と気も同じで、体を動かさなければ精気が流れず、精気が流れなければ気が滞る。滞りが頭にとどまれば腫れものやおこり(発熱)となり、耳にとどまれば難聴や耳聾となり、目にとどまれば目やにや失明となり、鼻にとどまれば鼻づまりや鼻閉となり、腹にとどまれば膨満や腹の病となり、足にとどまれば足の萎えや脚気となる。
解説
「流水は腐らず、戸枢は朽ちず」という有名な句で、動くことの大切さを説いています。流れる水や使い続ける扉の軸が傷まないように、体も動かさなければ精気が滞り、その滞りが頭・耳・目・鼻・腹・足それぞれにさまざまな病を引き起こすと具体的に述べます。運動不足が万病のもとだという、きわめて実践的な養生論です。現代の医学でも、適度な運動が血流や代謝を保ち健康を守ることは常識で、二千年以上前にこの原理を見抜いていた点は驚きです。体を動かして気を巡らせるという教えは、今日の生活習慣にそのまま生かせます。
この章句が説くこと
流水不腐戶枢戸枢精気気鬱養生
関連する章句
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『養生訓』巻第二・総論下およそ人の身、慾をすくなくし、時々身をうごかし、手足をはたらかし歩行して、久しく一所に安坐せざれば、血気めぐりて滞らず。養生の要務なり。日々かくのごとくすべし。呂氏春秋に曰く、流水は腐らず、戸枢は螻まず、動けばなり、形気も亦然り。いふ意は、流水は腐らず、たまり水はくさる。から戸のぢくの下のくるるは虫くはず。此二のものは、つねに動く故わざはひなし。人の身も亦かくの如し。一所に久しく安坐してうごかざれば、飲食とどこほり、血気めぐらずして病を生ず。食後に臥すと、昼臥すと、尤禁ずべし。夜も飲食の消化せざる内に早く臥せば、気をふさぎ病を生ず。是養生の道において尤いむべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一或人の曰、養生の術、隠居せし老人、又年わかくしても、世をのがれて安閑無事なる人は宜しかるべし。士として、君父につかへて忠孝をつとめ、武芸をならひて身をはたらかし、農工商の夜昼家業を勤めていとまなく、身閑ならざる者は、養生成りがたかるべし。かかる人、もし養生の術をもはら行はば、其身やはらかに、其わざゆるやかにして、事の用にたつべからずと云ふ。是養生の術を知らざる人のうたがひ、むべなるかな。養生の術は、安閑無事なるを専とせず、心を静にし身をうごかすをよしとす。身を安閑にするは、かへつて元気とどこほりふさがりて病を生ず。たとへば流水はくさらず、戸枢は朽ちざるが如し。是うごく者は長久なり、うごかざる物はかへつて命みじかし。是を以て四民ともに事をよくつとむべし。安逸なるべからず。是すなはち養生の術なり。
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