呂氏春秋 / 仲春⑤
是月也,耕者少舍,乃修闔扇,寢廟必備。無作大事,以妨農功。
新字:是月也,耕者少舎,乃修闔扇,寝廟必備。無作大事,以妨農功。
書き下し
是の月や、耕者少しく舎めば、乃ち闔扇を修め、寝廟必ず備わらしむ。大事を作して以て、農功を妨ぐること無かれ。
現代語訳
この月に、農夫に少し暇ができたなら、門のとびらを修理し、祖先をまつる寝廟を必ず整えさせる。しかし軍事や築城のような大がかりな事業を起こして、農作業のさまたげとしてはならない。
解説
この段は、農事を最優先とする月令の原則を説きます。農夫にわずかな余裕ができたときには門扉の修理や寝廟の整備といった軽い仕事を行わせますが、戦争や大規模な土木工事など人手を大きく奪う大事を起こして農作業を妨げてはならないと戒めます。呂氏春秋の十二紀は、季節ごとに何を優先すべきかを明示し、とりわけ春は耕作の時期として重んじられます。為政者が民の生業の時機を奪わないことを求める思想です。現代でも、繁忙期には本業を妨げる余計な負担を課さず、優先順位を守るという段取りの知恵として読み取ることができます。
この章句が説くこと
仲春農事優先寝廟大事の禁止時機段取り
関連する章句
-
説苑・說叢時至らざれば、強いて生ずべからず。事究めざれば、強いて求むべからず。貞良にして亡ぶるは、先人の餘殃なり。猖獗にして活くるは、先人の餘烈なり。權は重きを取り、澤は長きを取る。才賢にして任輕ければ則ち名有り、不肖にして任大なれば身死し名廢る。
-
論語・郷党篇色みて斯に挙がり、翔りて後に集まる。曰く、「山梁の雌雉、時なるかな、時なるかな。」子路之を共す。三たび嗅ぎて作つ。
-
説苑・說叢時なるかな、時なるかな。間謀に及ばず。時の極みに至れば、間息を容れず。勞して體せざれば、亦た將に自ら息わんとす。有りて施さざれば、亦た將に自ら得んとす。
-
説苑・建本子路曰わく、重きを負い道遠き者は地を択びて休まず、家貧しく親老いたる者は禄を択びて仕えず、と。昔者由二親に事うるの時、常に藜藿の実を食して親の為に米を百里の外に負う。親没するの後、南のかた楚に遊び、車百乗に従い、粟を積むこと万鍾、茵を累ねて坐し、鼎を列ねて食う。藜藿を食い米を負いし時を願うも復た得可からず。枯魚索を銜んで、幾何ぞ蠹まざらん。二親の寿は忽ち隙を過ぐるが如し。草木長ぜんと欲するも霜露は使さず。賢者養わんと欲するも二親待たず。故に曰わく、家貧しく親老いたれば禄を択びて仕うと。
-
呂氏春秋・愼人②舜の耕漁せしときも、其の賢不肖は天子為ると同じ。其の未だ時に遇わざるや、其の徒屬を以て、地財を掘り、水利を取り、蒲葦を編み、罘網を結び、手足胼胝するも居まず。然る後に凍餒の患いを免れたり。其の時に遇うや、登りて天子と為り、賢士之に歸し、萬民之を譽め、丈夫女子、振振殷殷として、戴き説ばざるは無し。舜自ら詩を為りて曰く、「普天の下、王土に非ざるは莫し。率土の濱、王臣に非ざるは莫し。」盡く之を有するを見わす所以なり。盡く之を有するも、賢なること加わるに非ざるなり。盡く之れ無きも、賢なること損するに非ざるなり。時然らしむるなり。
-
呂氏春秋・首時⑤飢馬厩に盈ちて嗼然たるは、未だ芻を見ざればなり。飢狗窖に盈ちて嗼然たるは、未だ骨を見ざればなり。骨と芻とを見れば、動くこと禁ず可からず。亂世の民嗼然たるは、未だ賢者を見ざればなり。賢人を見れば則ち往くこと止む可からず。往くとは其の形に非ず、心を之れ謂うか。齊は東帝を以て天下に困しみ、而して魯は徐州を取れり。邯鄲は壽陵を以て萬民に困しみて、而して衛は繭氏を取れり。魯・衛の細を以て、皆志を大國に得たるは、其の時に遇えばなり。故に賢主秀士の黔首を憂えんと欲する者は、亂世之に當たれり。天は再び與えず、時は久しく留まらず。能は兩つながら工ならず、事之に當たるに在り。