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呂氏春秋 / 愼人②

舜之耕漁,其賢不肖與為天子同。其未遇時也,以其徒屬,堀地財,取水利,編蒲葦,結罘網,手足胼胝不居,然後免於凍餒之患。其遇時也,登為天子,賢士歸之,萬民譽之,丈夫女子,振振殷殷,無不戴說。舜自為詩曰:“普天之下,莫非王土,率土之濱,莫非王臣”,所以見盡有之也。盡有之,賢非加也;盡無之,賢非損也;時使然也。

新字:舜之耕漁,其賢不肖与為天子同。其未遇時也,以其徒属,堀地財,取水利,編蒲葦,結罘網,手足胼胝不居,然後免於凍餒之患。其遇時也,登為天子,賢士歸之,万民誉之,丈夫女子,振振殷殷,無不戴説。舜自為詩曰:“普天之下,莫非王土,率土之浜,莫非王臣”,所以見尽有之也。尽有之,賢非加也;尽無之,賢非損也;時使然也。

書き下し

舜の耕漁せしときも、其の賢不肖は天子為ると同じ。其の未だ時に遇わざるや、其の徒屬を以て、地財を掘り、水利を取り、蒲葦を編み、罘網を結び、手足胼胝するも居まず。然る後に凍餒の患いを免れたり。其の時に遇うや、登りて天子と為り、賢士之に歸し、萬民之を譽め、丈夫女子、振振殷殷として、戴き説ばざるは無し。舜自ら詩を為りて曰く、「普天の下、王土に非ざるは莫し。率土の濱、王臣に非ざるは莫し。」盡く之を有するを見わす所以なり。盡く之を有するも、賢なること加わるに非ざるなり。盡く之れ無きも、賢なること損するに非ざるなり。時然らしむるなり。

現代語訳

舜が耕し漁をしていたときも、その賢さは天子であったときと同じである。まだ時機に遇わなかったころは、仲間とともに土地の産物を掘り、水の利を取り、蒲や葦を編み、網を結び、手足があかぎれになるほど働いてやまず、そうしてやっと凍えや飢えの心配を免れた。時機に遇うと、登って天子となり、賢士が帰服し、万民が称え、男も女も大勢集まって盛んに、みな仰ぎ喜んだ。舜は自ら詩を作って言った。「天の下すべて王の土地でないものはなく、地の果てまで王の臣でないものはない。」これはすべてを所有していることを表す。すべてを所有しても賢さが増したのではなく、すべてを持たなくても賢さが減るのでもない。時機がそうさせるのである。

解説

舜は貧しく耕漁していたころも天子となった後も賢さ自体は変わらず、違いは時機だけだ、と説きます。背景には、人の価値は境遇や地位によって増減しないという本篇の人間観があり、時機に恵まれれば天下を治めるが、恵まれなくても本質は同じだとします。普天の下王土に非ざるは莫しの詩を引く点も印象的です。現代でも、地位や成功の有無で人の本質的な価値を測るべきでないという視点は、不遇のときも自分を卑下せず、成功しても驕らない、静かな自己肯定の支えとなります。

この章句が説くこと

時機賢不肖天子境遇自己肯定

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