呂氏春秋 / 孟春③
是月也,天子乃以元日祈穀于上帝。乃擇元辰,天子親載耒耜,措之參于保介之御間,率三公九卿諸侯大夫躬耕帝籍田,天子三推,三公五推,卿諸侯大夫九推。反,執爵于太寢,三公九卿諸侯大夫皆御,命曰「勞酒」。
新字:是月也,天子乃以元日祈穀于上帝。乃択元辰,天子親載耒耜,措之参于保介之御間,率三公九卿諸侯大夫躬耕帝籍田,天子三推,三公五推,卿諸侯大夫九推。反,執爵于太寝,三公九卿諸侯大夫皆御,命曰「労酒」。
書き下し
是の月や、天子乃ち元日を以て穀を上帝に祈る。乃ち元辰を擇び、天子親ら耒耜を載せ、之を參于の保介の御の間に措き、三公・九卿・諸侯・大夫を率いて躬ら帝籍田を耕す。天子、三たび推し、三公、五たび推し、卿・諸侯・大夫、九たび推す。反りて爵を太寝に執り、三公・九卿・諸侯・大夫、皆御し、命じて「勞酒」と曰う。
現代語訳
この月に、天子は吉日を選んで上帝(天の最高神)に穀物の豊作を祈る。さらに吉日を選び、天子みずから耒耜(すき)を車に載せ、それを添え乗りの介添え役と御者の間に置き、三公・九卿・諸侯・大夫を率いて、神に供える穀物を作る帝籍田をみずから耕す。天子は鋤を三度押し、三公は五度、卿・諸侯・大夫は九度押す。終えて宮廷に戻ると、太寝(祖廟)で酒杯を手に取り、三公以下みなが列席し、これを「労酒(ねぎらいの酒宴)」と名づける。
解説
天子みずからが鋤をとって田を耕す「籍田の礼」を記した段です。天子が形だけでも農耕を実践するのは、農業こそ国の根本であることを身をもって示し、民に範を垂れるためです。身分が高い者ほど押す回数が少なく、下の者ほど多いのは、上に立つ者は象徴として先んじ、実務は下が担うという役割分担を表しているとも読めます。祈りと労働と宴を一連の儀礼にまとめることで、豊作への願いと働く者へのねぎらいを結びつけています。トップが現場の重要性を自ら体現し、関わった人々をねぎらう——リーダーシップの原型として今も示唆に富む一段です。
この章句が説くこと
籍田祈穀上帝耒耜労酒農本
関連する章句
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礼記・月令相(しょう)に命じて徳を布き令を和し、慶を行い恵みを施し、下は兆民に及ぼさしむ。慶賜遂に行われ、当たらざること有る毋(な)し。 乃ち大史に命じて典を守り法を奉じ、天の日月星辰の行りを司り、宿離(しゅくり)貸(たが)わず、経紀を失うこと毋く、初めを以て常と為さしむ。 是の月や、天子乃ち元日を以て穀を上帝に祈る。乃ち元辰を択び、天子親ら耒耜(らいし)を載せ、之を参保介(さんほかい)の御の間に措(お)き、三公・九卿・諸侯・大夫を帥いて、躬(みずか)ら帝藉(ていせき)を耕す。天子は三たび推し、三公は五たび推し、卿・諸侯は九たび推す。反りて、爵を大寝に執り、三公・九卿・諸侯・大夫皆御(はべ)る、命じて労酒と曰う。
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呂氏春秋・孟冬⑥是の月や、大いに飲蒸し、天子乃ち來年を天宗に祈る。大いに割きて、公社及び門閭を祠り、先祖五祀を饗し、農夫を勞い、以て之を休息せしむ。天子乃ち將率に命じて、武を講じ、射御を肄い、力を角わしむ。
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国語・周語上宣王即位して、千畝(せんぽ)に籍(せき)せず。虢文公(かくぶんこう)諫めて曰く、「不可なり。夫れ民の大事は農に在り。上帝の粢盛(しせい)是に於いてか出で、民の蕃庶(はんしょ)是に於いてか生じ、事の供給是に於いてか在り、和協輯睦(わきょうしゅうぼく)是に於いてか興り、財用蕃殖是に於いてか始まり、敦厖純固(とんぼうじゅんこ)是に於いてか成る。是の故に稷(しょく)を大官と為す。古は、太史時に順いて土を覛(み)る。陽癉(あつ)く憤盈(ふんえい)し、土気震発し、農祥晨に正しく、日月天廟に底(いた)れば、土乃ち脈発す。 「時に先だつこと九日、太史稷に告げて曰く、『今より初吉に至るまで、陽気俱に蒸(のぼ)り、土膏(どこう)其れ動かん。震わず渝(か)えずんば、脈其れ満ちて眚(わざわい)し、穀乃ち殖えず』と。稷以て王に告げて曰く、『史陽官を帥いて以て我が司事に命じて曰く、「今を距(さ)ること九日、土其れ俱に動かん。王其れ祗(つつし)み祓(はら)いて、農を監して易えざれ」と』と。王乃ち司徒をして咸(みな)公卿・百吏・庶民を戒めしめ、司空は壇を籍に除し、農大夫に命じて咸農用を戒めしむ。 「時に先だつこと五日、瞽(こ)協風の至る有るを告ぐ。王斎宮に即き、百官御事、各其の斎に即くこと三日。王乃ち淳濯(じゅんたく)して醴(れい)を饗(う)く。期に及び、鬱人(うつじん)鬯(ちょう)を薦め、犧人(ぎじん)醴を薦む。王鬯を祼(かん)し、醴を饗けて乃ち行く。百吏・庶民畢(ことごと)く従う。籍に及び、后稷之を監し、膳夫・農正籍の礼を陳べ、太史王を賛(みちび)き、王敬しんで之に従う。王耕すこと一墢(いちばつ)、班(つい)でて之を三にし、庶民千畝を終う。其の后稷は功を省(かえり)み、太史之を監す。司徒は民を省み、太師之を監す。畢(お)われば、宰夫饗を陳べ、膳宰之を監す。膳夫王を賛け、王大牢(たいろう)を歆(う)け、班でて之を嘗め、庶人食を終う。
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呂氏春秋・上農②后稷曰く、「耕織を務むる所以の者は、以て本教と為せばなり。」是の故に天子親ら諸侯を率いて帝籍田に耕し、大夫・士皆功業有り。是の故に時の務に當りてや、農の國に見えざるは、以て民に地產を尊ぶを教うればなり。后妃は九嬪を率いて郊に蠶し、公田に桑す。是を以て春秋冬夏皆麻枲絲繭の功有るは、以て婦教を力むればなり。是の故に丈夫は織らずして衣、婦人は耕さずして食し、男女功を貿えて以て長生す。此れ聖人の制なり。故に時を敬しみ日を愛し、老ゆるに非ざれば休まず、疾むに非ざれば息わず、死するに非ざれば舍かず。
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礼記・祭義「君子は古に反り始めに復り、その由りて生ずる所を忘れざるなり。是を以てその敬を致し、その情を発し、力を竭(つ)くして事に従い、以てその親に報い、敢えて尽くさざること弗(な)し。是の故に、昔者(むかし)天子は藉(せき)千畝を為(おさ)め、冕して朱紘(しゅこう)し、躬(みずか)ら耒(らい)を秉(と)る。諸侯は藉百畝を為め、冕して青紘し、躬ら耒を秉る。以て天地・山川・社稷・先古に事え、以て醴酪斉盛(れいらくしせい)を為り、是に於いてかこれを取る。敬の至りなり。
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呂氏春秋・季冬③是の月や、日、次に窮まり、月、紀に窮まり、星、天を迴り、數、將に終わりに幾からんとし、歲、將に更始せんとす。農民に專らにして、使う所有ること無かれ。天子乃ち卿大夫と國典を飭え、時令を論じ、以て來歲の宜しきを待つ。乃ち太史に命じて、諸侯の列を次し、之に犧牲を賦せしめ、以て皇天・上帝・社稷の享に供す。乃ち同姓の國に命じて、寢廟の芻豢を供せしむ。宰に令して卿大夫より庶民に至るまでの土田の數を歷えて、之に犧牲を賦せしめ、以て山林名川の祀に供す。凡そ天下九州に在るの民は、咸其の力を獻ぜざるは無く、以て皇天・上帝・社稷・寢廟・山林・名川の祀に供す。

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