呂氏春秋 / 上農②
后稷曰:「所以務耕織者,以為本教也。」是故天子親率諸侯耕帝籍田,大夫士皆有功業。是故當時之務,農不見於國,以教民尊地產也。后妃率九嬪蠶於郊,桑於公田。是以春秋冬夏皆有麻枲絲繭之功,以力婦教也。是故丈夫不織而衣,婦人不耕而食,男女貿功,以長生,此聖人之制也。故敬時愛日,非老不休,非疾不息,非死不舍。
新字:后稷曰:「所以務耕織者,以為本教也。」是故天子親率諸侯耕帝籍田,大夫士皆有功業。是故当時之務,農不見於国,以教民尊地産也。后妃率九嬪蠶於郊,桑於公田。是以春秋冬夏皆有麻枲糸繭之功,以力婦教也。是故丈夫不織而衣,婦人不耕而食,男女貿功,以長生,此聖人之制也。故敬時愛日,非老不休,非疾不息,非死不舎。
書き下し
后稷曰く、「耕織を務むる所以の者は、以て本教と為せばなり。」是の故に天子親ら諸侯を率いて帝籍田に耕し、大夫・士皆功業有り。是の故に時の務に當りてや、農の國に見えざるは、以て民に地產を尊ぶを教うればなり。后妃は九嬪を率いて郊に蠶し、公田に桑す。是を以て春秋冬夏皆麻枲絲繭の功有るは、以て婦教を力むればなり。是の故に丈夫は織らずして衣、婦人は耕さずして食し、男女功を貿えて以て長生す。此れ聖人の制なり。故に時を敬しみ日を愛し、老ゆるに非ざれば休まず、疾むに非ざれば息わず、死するに非ざれば舍かず。
現代語訳
后稷は『耕作と機織りに励ませるのは、それを人倫の根本の教え(本教)とするためだ』と言った。だから天子は自ら諸侯を率いて天子の籍田(儀礼用の田)を耕し、大夫や士もみなそれぞれ務めを果たす。農繁期になると農民の姿が国都で見られなくなるのは、民に土地の産物(農)を尊ぶことを教えるためである。后妃は九人の嬪(きさき)を率いて郊外で養蚕し、公田で桑を摘む。こうして春夏秋冬いつも麻や絹をつくる仕事があるのは、婦人の務め(婦教)に励むためである。だから男は機を織らなくても衣服を着られ、女は耕さなくても食べられる。男女が仕事を分担し交換し合って生活を成り立たせる。これが聖人の定めた制度である。ゆえに農の時節を敬い一日一日を惜しみ、老いない限り休まず、病まない限り息(やす)まず、死ぬまでやめないのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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呂氏春秋・上農①古、先聖王の其の民を導く所以の者は、先づ農を務む。民の農たるは徒に地の利の為のみに非ざるなり。其の志を貴ぶなり。民農たれば則ち樸たり。樸たれば則ち用い易し。用い易ければ則ち邊境安く、主位尊し。民農たれば則ち重し。重ければ則ち私義少なし。私義少なければ、則ち公法立ち、力專一なり。民農たれば則ち其の產復す。其の產復せば則ち徙ることを重り、徙ることを重れば則ち處に死して二慮無し。民、本を舎てて末を事とすれば則ち令せられず。令せられざれば則ち以て守る可からず、以て戰う可からず。民、本を舎てて末を事とすれば則ち其の產約す。其の產約すれば則ち輕々しく遷徙す。輕々しく遷徙すれば則ち國家患い有り。皆遠志有れば、居心有る無し。民、本を舎てて末を事とすれば則ち智を好む。智を好めば則ち詐り多く、詐り多ければ則ち法令に巧みにして、是を以て非と為し、非を以て是と為す。
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呂氏春秋・上農④故に時の務めに當りてや、土功を興さず、師徒を作さず、庶人は冠弁・娶妻・嫁女・享祀せず、酒醴もて衆を聚めず、農は上聞せざれば、敢て私に庸に籍やしめず。害を時に為せばなり。苟しくも同姓に非ざれば、男は出でて御らず、女は外に嫁がず、以て農を安んずるなり。
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呂氏春秋・孟春③是の月や、天子乃ち元日を以て穀を上帝に祈る。乃ち元辰を擇び、天子親ら耒耜を載せ、之を參于の保介の御の間に措き、三公・九卿・諸侯・大夫を率いて躬ら帝籍田を耕す。天子、三たび推し、三公、五たび推し、卿・諸侯・大夫、九たび推す。反りて爵を太寝に執り、三公・九卿・諸侯・大夫、皆御し、命じて「勞酒」と曰う。
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『帝範』務農第十夫(そ)れ食(しょく)は人(ひと)の天(てん)為(た)り、農(のう)は政(まつりごと)の本(もと)為(た)り。倉廪(そうりん)實(み)つれば則(すなは)ち禮節(れいせつ)を知(し)り、衣食(いしょく)足(た)れば則(すなは)ち㢘恥(れんち)を志(こころざ)す。故(ゆゑ)に躬(みづか)ら東郊(とうこう)に耕(たがや)し、敬(つつし)みて人(ひと)に時(とき)を授(さづ)く。國(くに)に九嵗(きゅうさい)の儲(たくは)へ無(な)ければ、水旱(すいかん)に備(そな)ふるに足(た)らず、家(いへ)に一年(いちねん)の服(ふく)無(な)ければ、寒暑(かんしょ)を御(ふせ)ぐに足(た)らず。然(しか)るに莫(な)くんばあらず、犢(こうし)を帶(お)び牛(うし)を佩(お)び、堅(けん)を棄(す)てて偽(ぎ)に就(つ)く。什一(じゅういち)の利(り)を求(もと)めて、農桑(のうそう)の基(もとゐ)を廢(はい)す。一人(いちにん)耕(たがや)して百人(ひゃくにん)食(しょく)するを以(も)ってすれば、其(そ)の害(がい)為(た)るや、秋螟(しゅうめい)よりも甚(はなは)だし。禁(きん)じて浮華(ふか)を絶(た)ち、耕織(こうしょく)を勸課(かんか)し、人(ひと)をして其(そ)の本(もと)に還(かへ)らしめ、俗(ぞく)をして其(そ)の真(しん)に反(かへ)らしむるに若(し)くは莫(な)し。則(すなは)ち競(きそ)ひて仁義(じんぎ)の心(こころ)を懷(いだ)き、永(なが)く貪殘(たんざん)の路(みち)を絶(た)つ。此(こ)れ務農(むのう)の本(もと)なり。斯(こ)の二者(にしゃ)は、制俗(せいぞく)の機(き)なり。
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呂氏春秋・孝行①凡そ天下を為め、國家を治むるには、必ず本を務めて末を後にす。所謂本とは、耕耘種殖の謂に非ず、其の人を務むるなり。其の人を務むとは、貧にして之を富まし、寡にして之を衆くするに非ず。其の本を務むるなり。本を務むるは孝より貴きは莫し。人主孝なれば、則ち名章榮に、下服聽し、天下譽しむ。人臣孝なれば、則ち君に事えて忠、官に處りて廉、難に臨みて死す。士民孝なれば、則ち耕芸疾く、守戰固く、罷北せず。夫れ孝は、三皇五帝の本務にして、萬事の紀なり。
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呂氏春秋・任地①后稷曰く、子能く窐を以て突と為すか。子能く其の惡を藏して之を揖むるに陰を以てするか。子能く吾が土をして靖めて土を甽浴せしむるか。子能く保溼して地を安んじて處らしむるか。子能く雚夷をして淫すること毋からしむるか。子能く子の野をして盡く泠風を為さしむるか。子能く藁をして數節にして莖堅ならしむるか。子能く穗をして大にして堅さ均しからしむるか。子能く粟をして圜くして糠を薄からしむるか。子能く米をして多く沃にして、之を食いて彊からしむるか。之を為すは若何。