論語 / 子張篇
子貢曰:「紂之不善,不如是之甚也。是以君子惡居下流,天下之惡皆歸焉。」
新字:子貢曰:「紂之不善,不如是之甚也。是以君子悪居下流,天下之悪皆帰焉。」
書き下し
子貢曰く、紂の不善、是くの如くこれ甚だしからざるなり。是を以て君子は下流に居るを悪む。天下の悪皆焉に帰す。
現代語訳
子貢が言った。「紂王の悪行は、伝えられているほどひどくはなかっただろう。だからこそ君子は、下流に身を置くことを嫌う。天下の悪はすべてそこへ流れ込んでくるからだ。」
解説
悪名の構造についての観察である。紂王は暴君の代名詞になっているが、実際の悪行はそこまでではなかったはずだ、と子貢は言う。一度悪評が定着すると、あらゆる悪事がその人に帰せられるからである。下流という比喩が的確だ。低いところには、すべての汚れが流れ込む。この現象は現代でも変わらない。評判が悪くなった個人や組織には、無関係な非難まで集まる。逆に、評判のよい相手の失敗は割り引かれる。事実の集積で評価が決まるのではなく、評価が事実の集まり方を決める。だから子貢は、下流に身を置くなと言う。一度そこへ落ちると、個々の弁明では戻れない。評判は、悪化し始めたときに手を打つしかない。