論語 / 季氏篇
邦君之妻,君稱之曰「夫人」,夫人自稱曰「小童」;邦人稱之曰「君夫人」,稱諸異邦曰「寡小君」;異邦人稱之,亦曰「君夫人」。
新字:邦君之妻,君称之曰「夫人」,夫人自称曰「小童」;邦人称之曰「君夫人」,称諸異邦曰「寡小君」;異邦人称之,亦曰「君夫人」。
書き下し
邦君の妻、君之を称して夫人と曰う。夫人自ら称して小童と曰う。邦人之を称して君夫人と曰い、諸を異邦に称して寡小君と曰う。異邦人之を称して、亦た君夫人と曰う。
現代語訳
国君の妻について、君主はこれを夫人と呼ぶ。夫人は自らを小童と称する。国内の人はこれを君夫人と呼び、他国に対して言うときは寡小君と呼ぶ。他国の人がこれを呼ぶときは、やはり君夫人と言う。
解説
呼称の使い分けだけを記した、実務的な条文である。同じ一人の人物が、誰が誰に対して呼ぶかによって、四通りの名で呼ばれる。君主から、本人から、国内の人から、他国に対して、他国の人から。関係の数だけ呼び名がある。煩瑣に見えるが、呼称が関係を明示する装置として機能していたということだ。現代の組織にも、形を変えて同じものがある。社内での呼び方、顧客に対する呼び方、対外的な肩書き。使い分けを誤ると、関係の認識がずれる。社外の人に社内の通称を使えば身内扱いになるし、社内で対外的な肩書きを使えばよそよそしくなる。孔子が正名を重んじたのは、こうした細部が関係の秩序を支えていると考えたからだろう。呼び方は、関係の定義そのものである。