論語 / 衛霊公篇
子曰:「事君,敬其事而後其食。」
書き下し
子曰く、君に事うるには、其の事を敬して其の食を後にす。
現代語訳
先生がおっしゃった。「主君に仕えるには、まず職務に真剣に取り組み、俸禄のことは後にする。」
解説
職務と報酬の順序を定めている。仕事が先で、報酬は後。単純だが、実際には逆になりやすい。報酬に見合った働きをする、という考え方は公平に見えるし、多くの人が採用している。だが、この考え方は上限を先に決めてしまう。報酬が上がるまで働きを増やさないなら、報酬が上がる根拠も生まれない。孔子の順序は、その循環を断つためのものだ。ただし、これを雇う側が言えば搾取の理屈になる。この教えは、仕える側が自分に課すものである。雍也篇には、原思が俸禄を辞退したときに受け取れと言った場面もあった。孔子は報酬を軽視していない。順序を言っているだけである。まず職務、それから報酬。この順で考える人は、結果として報酬も得やすい。
この章句が説くこと
職務報酬順序敬事仕える
関連する章句
-
論語・学而篇子曰く、「千乗の国を道びくには、事を敬んで信、用を節して人を愛し、民を使うに時を以てす。」
-
『武士道』第十章 武士の教育・精神上の勤労は価無きに非ず今や何等の勤労に酬うるにも、一に金銭を以てするが如き風は、武士道を遵奉する者の間に、かつて行はれしこと無かりき。武士道は、金を獲ず、又た価を受けずして、始めて他に尽すことを得るの務あるを信じたり。乃ち僧侶にもせよ、教師にもせよ、其精神上の勤労は、価無きに非らず、却つて価の量るべからざるが故に、金銭を以て之に報ずるを得べきものに非らずとしたり。是に由りて之を見れば、算数的ならざる武士道の名誉の本能は、近世の経済学に超越して、真理の教訓を与へたるものなりと謂ひつべし。けだし賃銭俸給の如きは、勤労任務の結果の、明かに見るを得べく、量るを得べきものにのみ対して、之を払ふて大差なかるべしと雖、教育に奉ずる最美の勤労、即ち人の霊性の啓発に裨補する任務の如きに至りては、其量のもとより瞭かならざるを以て、ひとり之を認むる能はざるのみならず、又た之を数ふるを得ず。
-
『墨子』公孟子墨子の門に游ぶ者有り、子墨子に謂いて曰く、「先生、鬼を以て神眀にして知り、能く人に禍いを為すと為すか」と。子墨子の門に游ぶ者有り、身體强良、思慮狥通なり。隨いて學ばしめんと欲す。子墨子曰く、「姑く學べ。吾れ将に子を仕えしめん」と。善言に勸められて學ぶ。其の年にして、仕えんことを子墨子に責む。子曰く、「子を仕えしめず。子も亦た夫の魯の語を聞かんか。昆弟五人なる者有り。其の父死して、其の長子、酒を嗜みて葬らず。其の四弟曰く、『子、我と葬らば、當に子の為に酒を沽うべし』と。善言に勸められて葬る。已に葬りて、酒を其の四弟に責む。四弟曰く、『吾れ未だ子に酒を予えず。子は子の父を葬り、我れは吾が父を葬る。豈に獨り吾が父ならんや。子、葬らずんば、則ち人、将に子を笑わんとす。故に子に葬るを勸めしなり』と。今、子は義を為し、我も亦た義を為す。豈に獨り我が義ならんや。子、學ばずんば、則ち人、将に子を笑わんとす。故に子に學を勸めしなり」と。
-
孟子・公孫丑章句下孟子、齊を去り、休に居る。公孫丑、問いて曰く、「仕えて祿を受けざるは、古の道か。」曰く、「非なり。崇に於いて、吾、王に見ゆるを得たり。退いて去る志有り。變ずるを欲せず。故に受けざるなり。繼いで師命有り。以て請う可からず。齊に久しきは、我が志に非ざるなり。」
-
三略・上略軍讖に曰く、軍に財無ければ、士来たらず。軍に賞無ければ、士往かず、と。
-
『韓非子』難一第三十六且つ臣は死力を盡くして以て君と市し、君は爵祿を垂れて以て臣と市す。君臣の際は、父子の親しきに非ざるなり。計數の出づる所なり。