論語 / 衛霊公篇
子曰:「人能弘道,非道弘人。」
書き下し
子曰く、人能く道を弘む。道人を弘むるに非ず。
現代語訳
先生がおっしゃった。「人が道を大きくするのであって、道が人を大きくするのではない。」
解説
主語と目的語を入れ替えただけの短い一句だが、含意は大きい。立派な思想に属していれば自分も立派になる、という考えを否定している。道は、それを実践する人がいて初めて広がる。道のほうが人を高めてくれるのではない。この転倒は、いまも頻繁に起きる。優れた理念を掲げる組織に所属していると、自分もその理念の担い手になったように感じる。有名な会社、権威ある資格、由緒ある団体。どれも、属することで自分の価値が上がるように錯覚させる。孔子はその向きを逆にした。組織や思想の価値は、そこにいる人が実際に何をしたかの総和でしかない。逆に言えば、自分の働きがそのまま道の大きさを決める。責任は重いが、意味のある重さである。