論語 / 衛霊公篇
子曰:「君子疾沒世而名不稱焉。」
新字:子曰:「君子疾没世而名不称焉。」
書き下し
子曰く、君子は世を沒えて名の称せられざるを疾む。
現代語訳
先生がおっしゃった。「君子は、生涯を終えても名が称えられないことを気にする。」
解説
名を求めるなという教えが多い論語の中で、この一句は異質に見える。だが、生涯を終えたあとの評価を問題にしている点が違う。生きているあいだの評判ではなく、死後に何が残るか。時間の尺度が違えば、名の意味も変わる。生前の評判は演出できるが、死後の評価は実際に残したもので決まる。この一句は、憲問篇の不患人之不己知と矛盾しない。生きているうちに認められないことは気にするな、しかし何も残せずに終わることは気にせよ、ということである。両者は別の問題だ。前者は他人の目、後者は自分の仕事の中身に関わる。仕事をする人にとって、点検すべきはこちらだろう。いま評価されているかではなく、自分がいなくなったあとに何が残るか。その問いに答えられるかどうかが、日々の選択を変える。
この章句が説くこと
名死後遺す評価時間
関連する章句
-
説苑・善說齊景公子貢に謂いて曰く、「子誰をか師とする。」曰く、「臣仲尼を師とす。」公曰く、「仲尼賢なるか。」對えて曰く、「賢なり。」公曰く、「其の賢たること何如。」對えて曰く、「知らざるなり。」公曰く、「子其の賢を知りて其の奚若たるを知らざるは、可ならんか。」對えて曰く、「今天高しと謂うに、少長愚智と無く皆高きを知る。高きこと幾何ぞや。皆知らずと曰う。是を以て仲尼の賢を知りて其の奚若たるを知らざるなり。」
-
論語・子張篇子游曰く、吾が友張や、能くし難きことを為すなり。然れども未だ仁ならず。
-
論語・憲問篇子曰く、『驥は其の力を称せず、その徳を称すなり。』
-
史記 管晏列伝鮑叔既に管仲を進め、身を以て之に下る。子孫世々斉に禄せられ、封邑を有つこと十余世、常に名大夫為り。天下、管仲の賢を多とせずして、鮑叔の能く人を知るを多とす。
-
論語・憲問篇子曰く、人の己を知らざるを患えず、其の能わざるを患う。
-
論語・子張篇陳子禽、子貢に謂いて曰く、「子は恭を為すなり。仲尼豈に子より賢らんや。」子貢曰く、「君子は一言以て知と為し、一言以て不知と為す。言は慎まざる可からざるなり。夫子の及ぶ可からざるや、猶お天の階して升る可からざるがごときなり。夫子の邦家を得たらば、所謂『之を立つれば斯に立ち、之を道けば斯に行き、之を綏んずれば斯に来たり、之を動かせば斯に和す。其の生くるや栄え、其の死するや哀しむ』。之を如何ぞ其れ及ぶ可けんや。」