論語 / 子路篇
子曰:「如有王者,必世而後仁。」
書き下し
子曰く、如し王者有らば、必ず世にして後に仁ならん。
現代語訳
先生がおっしゃった。「もし真の王者が現れたとしても、一世代を経てはじめて仁が行き渡るだろう。」
解説
前章の百年に続いて、こんどは一世代という単位が出てくる。理想的な指導者が現れても、成果が出るまでに三十年かかる、と。孔子の時間感覚は一貫して長い。しかも、これは悲観ではなく見積もりである。かかる時間を正確に見ているから、途中で焦らない。組織を率いる立場の人にとって、この見積もりの持ち方は実務的な意味を持つ。変化には固有の速度がある。制度は数か月、業務のやり方は数年、人の気風は一世代。この三つを混同すると、判断を誤る。制度を変えたのに気風が変わらないと嘆き、施策を次々に打ち替える。気風は制度の下流にあり、届くまでに時間がかかる。どこに手を打ち、どのくらい待つのか。待つ期間を最初に決めておくことが、継続の条件になる。