論語 / 先進篇
季路問事鬼神。子曰:「未能事人,焉能事鬼?」「敢問死?」曰:「未知生,焉知死?」
書き下し
季路、鬼神に事うるを問う。子曰く、「未だ人に事うること能わず、焉んぞ能く鬼に事えん。」「敢えて死を問う。」曰く、「未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん。」
現代語訳
季路が霊魂に仕える道について尋ねた。先生はおっしゃった。「まだ人に仕えることもできていないのに、どうして霊に仕えることができようか。」「では、あえて死についてお尋ねします。」おっしゃった。「まだ生を知らないのに、どうして死を知ろうか。」
解説
二つの問いを、同じ形で返している。先にあるものが分かっていないのに、後のものを問うな、という順序の指摘である。冷たい拒絶に見えるが、実際には問いの立て方を直している。死や霊は答えの検証ができない。一方、人に仕えること、生を知ることは、今日から取り組める。孔子は答えを拒んだのではなく、取り組める側へ問いを差し替えた。実務でもよくある構図だ。将来の大きな不確実性について議論に時間を使い、目の前の確実な課題が手つかずのままになる。十年後の市場を論じる前に、今期の顧客を知っているか。壮大な問いは知的で魅力的だが、順序を飛ばした問いは答えが出ない。答えの出る問いから片づけるのが、孔子の一貫した態度である。