論語 / 郷党篇
君賜食,必正席先嘗之。君賜腥,必熟而薦之。君賜生,必畜之。侍食於君,君祭,先飯。疾,君視之,東首,加朝服拖紳。君命召,不俟駕行矣。
書き下し
君、食を賜えば、必ず席を正して先ず之を嘗む。君、腥を賜えば、必ず熟して之を薦む。君、生を賜えば、必ず之を畜う。君に侍食するに、君祭れば、先ず飯す。疾めるとき、君之を視れば、東首し、朝服を加えて紳を拖く。君命じて召せば、駕を俟たずして行く。
現代語訳
君主が調理された食物を賜ると、必ず座席を正してまず自分が味わわれた。生肉を賜ると、必ず煮て先祖にお供えされた。生きた獣を賜ると、必ず飼っておかれた。君主のおそばで食事に侍るとき、君主が供え物をされているあいだに、先に飯を口にされた。病床にあるとき君主が見舞いに来られると、頭を東に向けて横たわり、上に礼服を掛け、大帯を引き渡された。君主から召しの命が下れば、車の支度を待たずに歩き出された。
解説
賜り物の三態と、君主に対する三つの場面が並ぶ。それぞれに違う対応をしているのが要点である。調理済みなら自分で味わい、生肉なら供え、生きた獣なら飼う。同じ「賜り物」でも、性質に応じて扱いが変わる。一律の感謝ではなく、そのものにふさわしい扱いを考えている。最後の一句が特に印象深い。召しがあれば、車の支度を待たずに歩き出す。支度が整ってから向かうのが合理的だが、それでは応答の速さが伝わらない。まず動き出し、車には途中で追いつかせる。応答の速さそのものが返答になるという発想である。重要な依頼への初動をどうするか、という問題に置き換えれば、いまも変わらない。準備が整うまで返事をしない人と、すぐ動き出す人では、信頼の蓄積が違う。