論語 / 郷党篇
君召使擯,色勃如也,足躩如也。揖所與立,左右手,衣前後,襜如也。趨進,翼如也。賓退,必復命,曰:「賓不顧矣。」
新字:君召使擯,色勃如也,足躩如也。揖所与立,左右手,衣前後,襜如也。趨進,翼如也。賓退,必復命,曰:「賓不顧矣。」
書き下し
君召して擯たらしむれば、色勃如たり、足躩如たり。与に立つ所に揖するに、手を左右にす。衣の前後、襜如たり。趨り進むこと、翼如たり。賓退けば、必ず復命して曰く、「賓顧みず。」
現代語訳
君主に呼ばれて客の接待役を命じられると、顔つきを引き締め、足取りをきびきびとされた。並んで立つ同役に会釈するときは、手を左右に向け、衣の前後がきちんと整っていた。小走りに進むさまは、翼を広げたようであった。客が退出すると、必ず復命して「お客様は振り返らずにお帰りになりました」と申し上げた。
解説
接待役という一つの職務が、動作の連続として細かく記録されている。読みどころは最後の一行である。客が退出したあと、必ず復命した。しかも報告したのは「振り返らずに帰った」という事実だけだ。客が満足していたかどうかの主観ではなく、確認できる行動を伝えている。振り返らないのは、名残を惜しむ必要がないほど礼が尽くされた証拠とされた。つまり、任務が完了したことの客観的な指標を報告しているのである。報告の質を考えるうえで、これは示唆的だ。うまくいきましたという感想は、聞いた側に何も残さない。客が振り返らなかった、という事実は検証できる。任された仕事の終わりを、どう報告するか。感想ではなく事実で締める習慣は、こういうところに現れる。