論語 / 述而篇
互鄉難與言。童子見,門人惑。子曰:「與其進也,不與其退也。唯何甚?人潔己以進,與其潔也,不保其往也!」
新字:互郷難与言。童子見,門人惑。子曰:「与其進也,不与其退也。唯何甚?人潔己以進,与其潔也,不保其往也!」
書き下し
互郷は与に言い難し。童子見ゆ。門人惑う。子曰く、「其の進むに与するなり、其の退くに与せざるなり。唯だ何ぞ甚だしき。人己を潔くして以て進まば、其の潔きに与するなり、其の往を保せざるなり。」
現代語訳
互郷の人々は、話し相手にしにくかった。(そこの)少年が(先生に)お目にかかったので、門人たちはとまどった。先生がおっしゃった。「(私は)その人が進んで(教えを求めて)来たことを認めるのであって、退いて(どうするか)まで認めるのではない。どうしてそんなにきびしくするのか。人が自分を清めて進んで来たなら、その清めたことを認めるのであって、その人の過去まで保証するわけではない。」
解説
評判の悪い土地から来た少年に会った孔子を、弟子たちは訝しんだ。孔子の返答は、人を評価する時制の話になっている。いま前に進もうとしていることに味方するのであって、その人の過去を保証するわけではない、と。過去と現在を切り離す宣言である。この線引きは実務でも重要になる。前歴に問題のある人を受け入れるとき、組織は往々にして全部を引き受けるか全部を拒むかの二択で考える。孔子はそうしなかった。いま清めて来たなら、その一点で迎える。過去を消してやるわけでも、保証してやるわけでもない。だから受け入れる側の負担は限定される。人に再挑戦の機会を出すときの、現実的な構えである。
この章句が説くこと
再挑戦受容過去互郷線引き
関連する章句
-
論語・先進篇子路問う、「聞かば斯に諸を行わんか。」子曰く、「父兄の在す有り、之を如何ぞ其れ聞かば斯に之を行わんや。」冉有問う、「聞かば斯に諸を行わんか。」子曰く、「聞かば斯に之を行え。」公西華曰く、「由や問う、『聞かば斯に諸を行わんか』と。子曰く、『父兄の在す有り』と。求や問う、『聞かば斯に諸を行わんか』と。子曰く、『聞かば斯に之を行え』と。赤や惑う。敢えて問う。」子曰く、「求や退く、故に之を進む。由や人を兼ぬ、故に之を退く。」
-
論語・述而篇子曰わく、束脩以上を行う者に於いては、吾いまだ誨うること無からざるなり。
-
『格言聯璧』接物類・人の惡を攻むるは太だ嚴なる毋かれ面諛の詞は、識有る者未だ必ずしも心を悅ばしめず。 背後の議は、憾みを受くる者常に骨に刻むに至る。 人の惡を攻むるには太だ嚴なる毋かれ、其の受くるに堪ふるを思ふを要す。 人に教ふるに善を以てするには過ぎて高くする毋かれ、當に其をして從ふべからしむべし。 互鄉の童子は則ち之を進む、其の善を開くなり。
-
論語・公冶長篇子曰く、伯夷・叔斉、旧悪を念わず。怨み是を用て希なり。
-
論語・述而篇子曰く、仁遠からんや。我仁を欲すれば、斯に仁至る。
-
論語・述而篇子曰く、「聖人は、吾得て之を見ず。君子者を見るを得ば、斯れ可なり。」子曰く、「善人は、吾得て之を見ず。恒有る者を見るを得ば、斯れ可なり。亡くして有りと為し、虚しくして盈てりと為し、約にして泰かなりと為す。難いかな恒有ること。」