驢鞍橋 / 卷下
夜話の次、去る僧曰く、某卵塔塲怖しき故に、機を張り立て、行き習ひ行き習ひして、機の張合の位を仕習ふ也。先つ始めは亡者をおつひしいて行き習ふ。後にも大入道を造立て、かまわず行き廻り行き廻りするに、機をきつと張懸て行けは、是れも自由に行かると云ふ。師聞て曰くおつひしいて行くは慈悲なし。夫れは惡い筋也。なぜ亡者の苦に代り、南無三曼多沒駄南梵□□と助けて行き習はんずと也。僧曰く、强い機を受けは、亡者苦を免るべし。師曰く、强い機にても、我弔ひは別也。僧便ちその意を問ふ。師曰くうそうそと弔ふべし。なに音せんずとも、なにこと有らんずともうそうそ也。纔かも念を生して行かば、早や躰を造ると也。
新字:夜話の次、去る僧曰く、某卵塔塲怖しき故に、機を張り立て、行き習ひ行き習ひして、機の張合の位を仕習ふ也。先つ始めは亡者をおつひしいて行き習ふ。後にも大入道を造立て、かまわず行き廻り行き廻りするに、機をきつと張懸て行けは、是れも自由に行かると云ふ。師聞て曰くおつひしいて行くは慈悲なし。夫れは悪い筋也。なぜ亡者の苦に代り、南無三曼多没駄南梵□□と助けて行き習はんずと也。僧曰く、强い機を受けは、亡者苦を免るべし。師曰く、强い機にても、我弔ひは別也。僧便ちその意を問ふ。師曰くうそうそと弔ふべし。なに音せんずとも、なにこと有らんずともうそうそ也。纔かも念を生して行かば、早や体を造ると也。
書き下し
夜話の次、去る僧曰く、某卵塔塲怖しき故に、機を張り立て、行き習ひ行き習ひして、機の張合の位を仕習ふ也。先つ始めは亡者をおつひしいて行き習ふ。後にも大入道を造立て、かまわず行き廻り行き廻りするに、機をきつと張懸て行けは、是れも自由に行かると云ふ。師聞て曰くおつひしいて行くは慈悲なし。夫れは悪い筋也。なぜ亡者の苦に代り、南無三曼多没駄南梵□□と助けて行き習はんずと也。僧曰く、强い機を受けは、亡者苦を免るべし。師曰く、强い機にても、我弔ひは別也。僧便ちその意を問ふ。師曰くうそうそと弔ふべし。なに音せんずとも、なにこと有らんずともうそうそ也。纔かも念を生して行かば、早や体を造ると也。
現代語訳
夜話のついでに、ある僧が言った。私は墓場が恐ろしいので、気迫を張り立てて、行くことを習いに習い、気迫の張り合いの位を習っております。まず始めは、亡者を押しつぶして行くことを習います。後には大入道を思い描いて、構わず行き巡り行き巡りするのですが、気迫をきっと張りかけて行けば、これも自由に行けます、と言う。師は聞いて言われた。押しつぶして行くのは慈悲がない。それは悪い筋である。なぜ亡者の苦に代わって、南無三曼多没駄南梵□□と助けて行くことを習わないのか、と。僧は言った。強い気迫を受ければ、亡者は苦を免れるでしょう。師は言われた。強い気迫であっても、私の弔いは別である。僧はすぐにその意を尋ねた。師は言われた。嘘、嘘と弔うがよい。何の音がしようと、何事があろうと、嘘である。わずかでも念を生じて行けば、もう形を造ってしまうのである、と。
解説
この章句が説くこと
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