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驢鞍橋 / 卷下

次に一僧曰く、此の前不三、正村抔六七人、去る和尙の所に在て坐禪の次、和尙曰く只今幽霊出ては、何れも収めんやと有りければ、正村曰く、何か收め申さではと也。和尙曰く、何と收めんや。正村曰く、幽靈出でば、其時に望んで收めんと云ふ。時に和尙座中に跳り出て、さあ我こそ幽靈よ、收めめされよと云ひ給ふ。正村ひしとつまれり。和尙曰く、あの賣僧めが賣僧めがと大に呵せられたりと也。

新字:次に一僧曰く、此の前不三、正村抔六七人、去る和尚の所に在て坐禅の次、和尚曰く只今幽霊出ては、何れも収めんやと有りければ、正村曰く、何か収め申さではと也。和尚曰く、何と収めんや。正村曰く、幽霊出でば、其時に望んで収めんと云ふ。時に和尚座中に跳り出て、さあ我こそ幽霊よ、収めめされよと云ひ給ふ。正村ひしとつまれり。和尚曰く、あの売僧めが売僧めがと大に呵せられたりと也。

書き下し

次に一僧曰く、此の前不三、正村抔六七人、去る和尚の所に在て坐禅の次、和尚曰く只今幽霊出ては、何れも収めんやと有りければ、正村曰く、何か収め申さではと也。和尚曰く、何と収めんや。正村曰く、幽霊出でば、其時に望んで収めんと云ふ。時に和尚座中に跳り出て、さあ我こそ幽霊よ、収めめされよと云ひ給ふ。正村ひしとつまれり。和尚曰く、あの売僧めが売僧めがと大に呵せられたりと也。

現代語訳

続けて一人の僧が言った。以前、不三、正村など六、七人が、ある和尚のところで坐禅をしていたとき、和尚が言われました。今ここに幽霊が出たら、誰か収められるか、とあったので、正村が言いました。どうして収めずにおきましょう。和尚は言われた。どう収めるか。正村は言いました。幽霊が出たら、そのときに臨んで収めましょう、と言います。そのとき和尚が座の中に跳び出して、さあ、我こそ幽霊よ、収められよ、と言われました。正村はひしと詰まりました。和尚は、あの売僧めが、売僧めが、と大いに叱られた、ということです。

解説

幽霊が出たら収められるか、と問われ、そのときになったら収めます、と答えた僧の前に、和尚が跳び出して、さあ私が幽霊だ、収めてみよ、と迫る。僧は言葉に詰まり、偽坊主め、と叱られた。そのときになれば何とかする、という答えは、今この場で試されると何もできないことを暴かれる。準備も覚悟もないまま、口先で大丈夫だと言う危うさを、禅の問答で鮮やかに示した逸話である。

この章句が説くこと

問答覚悟口先幽霊売僧試される

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