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驢鞍橋 / 卷下

師曰く、我は知らぬことなるか、定めて其位有るべしと思ふ、我は元より學文の成らぬ性也。乍去夫れか今は好いに成つた也。學文に器用ならば、是程迄もえし上けまじ。今に胸を離れて文議を沙汰すると云ふことを知らず、何としても學文者は耳にて沙汰して、胸を以て沙汰すると云ふこと有るべからず。文議にて早や道理を付くべし。只胸切にさばいて、乘らぬは乘らぬにし行く樣にせば、聞くと早く此の意彼の意とふらふらと胸にて分るへしと也。

新字:師曰く、我は知らぬことなるか、定めて其位有るべしと思ふ、我は元より学文の成らぬ性也。乍去夫れか今は好いに成つた也。学文に器用ならば、是程迄もえし上けまじ。今に胸を離れて文議を沙汰すると云ふことを知らず、何としても学文者は耳にて沙汰して、胸を以て沙汰すると云ふこと有るべからず。文議にて早や道理を付くべし。只胸切にさばいて、乗らぬは乗らぬにし行く様にせば、聞くと早く此の意彼の意とふらふらと胸にて分るへしと也。

書き下し

師曰く、我は知らぬことなるか、定めて其位有るべしと思ふ、我は元より学文の成らぬ性也。乍去夫れか今は好いに成つた也。学文に器用ならば、是程迄もえし上けまじ。今に胸を離れて文議を沙汰すると云ふことを知らず、何としても学文者は耳にて沙汰して、胸を以て沙汰すると云ふこと有るべからず。文議にて早や道理を付くべし。只胸切にさばいて、乗らぬは乗らぬにし行く様にせば、聞くと早く此の意彼の意とふらふらと胸にて分るへしと也。

現代語訳

師は言われた。私の知らないことだが、きっとその位はあるだろうと思う。私はもとより学問のできない性分である。けれども、それが今は良いことになった。学問が器用だったなら、これほどまでは仕上げられなかっただろう。今でも胸を離れて文義を詮議するということを知らない。どうしても学者は耳で詮議して、胸で詮議するということはないだろう。文義で、もう道理をつけてしまうはずだ。ただ胸で切に裁いて、乗らないことは乗らないままにしていくようにすれば、聞くやいなや、この意、あの意と、ふらふらと胸の中で分かるだろう、と。

解説

学問の癖に悩む弟子に、正三は、自分はもともと学問ができない性分だったが、それがかえって良かった、と言う。学問が得意なら、ここまで修行を仕上げられなかっただろう、と。学者は耳で聞いて文字の意味で理屈をつけるが、自分は胸で受け止め、腑に落ちないことは落ちないままにしておく。そうすれば、聞いた瞬間に胸で自然と分かるようになる、と。苦手や欠点が、別の強みになることを示す実感のこもった言葉である。
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人生を、一行の式にしてみた。

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この章句が説くこと

学問胸で聞く苦手強み腑に落ちる理屈

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