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驢鞍橋 / 卷上

一日語て曰く、あはれ佛法にて天下の仕置を仰付けあらば、只畜生一つを以て治めんと思ふ也。太閤の時代迄は、喧嘩橫死死罪の者一年に三千程の積り也。御當代には政道正く世□める故に、橫死死罪の者千人程の積りと云ふ人あり。是れを以て思ふに如何に人暗くして聞かずとも、佛法を以てせば慥に五百六百には成るべし。然れば亦大なる太平の基也。しかも大分に所領を取る役人も入らず治るべき也。

新字:一日語て曰く、あはれ仏法にて天下の仕置を仰付けあらば、只畜生一つを以て治めんと思ふ也。太閤の時代迄は、喧嘩横死死罪の者一年に三千程の積り也。御当代には政道正く世□める故に、横死死罪の者千人程の積りと云ふ人あり。是れを以て思ふに如何に人暗くして聞かずとも、仏法を以てせば慥に五百六百には成るべし。然れば亦大なる太平の基也。しかも大分に所領を取る役人も入らず治るべき也。

書き下し

一日語て曰く、あはれ仏法にて天下の仕置を仰付けあらば、只畜生一つを以て治めんと思ふ也。太閤の時代迄は、喧嘩横死死罪の者一年に三千程の積り也。御当代には政道正く世□める故に、横死死罪の者千人程の積りと云ふ人あり。是れを以て思ふに如何に人暗くして聞かずとも、仏法を以てせば慥に五百六百には成るべし。然れば亦大なる太平の基也。しかも大分に所領を取る役人も入らず治るべき也。

現代語訳

ある日語って言われた。ああ、仏法によって天下の政治を仰せつけられるなら、ただ畜生一つで治めようと思う。太閤の時代までは、喧嘩や非業の死、死罪の者が一年に三千人ほどの見積もりであった。当代は政道が正しく世が□められるので、非業の死や死罪の者は千人ほどの見積もりだと言う人がいる。これで思えば、どれほど人が暗くて聞かなくても、仏法でするなら確かに五、六百人にはなるだろう。それならば、また大きな太平の基である。しかも大いに所領を取る役人も要らずに治まるだろう。

解説

上巻の結びで、正三は仏法による統治の構想を語る。秀吉の時代に年三千人ほどいた喧嘩や死罪による死者が、今は千人ほどに減った。仏法を用いればさらに五、六百人に減らせるし、多くの役人も要らない、と。数字を挙げて具体的に効果を見積もる姿勢が興味深い。宗教的な理想を、統計に基づく政策提案のように語っている。理念を語るだけでなく、その効果を数字で示そうとする、実務家としての正三の顔が見える。

この章句が説くこと

統治構想統計太平政策仏法

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