驢鞍橋 / 卷上
或人來り雜話の次に云、信長は軍法は敵に知らせ度と仰せありと聞く。又權現樣抔も六ヶ敷軍立抔なく、めつたに懸り懸破り玉ふと承る。是れ無分別の心と申すものなりや。師答て曰、何と云ふ事はなし。只勝つた機と云ふもの也。
新字:或人来り雑話の次に云、信長は軍法は敵に知らせ度と仰せありと聞く。又権現様抔も六ヶ敷軍立抔なく、めつたに懸り懸破り玉ふと承る。是れ無分別の心と申すものなりや。師答て曰、何と云ふ事はなし。只勝つた機と云ふもの也。
書き下し
或人来り雑話の次に云、信長は軍法は敵に知らせ度と仰せありと聞く。又権現様抔も六ヶ敷軍立抔なく、めつたに懸り懸破り玉ふと承る。是れ無分別の心と申すものなりや。師答て曰、何と云ふ事はなし。只勝つた機と云ふもの也。
現代語訳
ある人が来て雑談のついでに言った。信長は、軍法は敵に知らせたい、とおっしゃったと聞きます。また権現様(家康)なども、難しい軍立てなどなく、むやみに懸かって懸け破られたとうかがいます。これは無分別の心というものでしょうか。師は答えて言われた。何ということはない。ただ勝った気迫というものである、と。
解説
信長は軍法を敵に知られても構わないと言い、家康は細かな作戦なしに攻めかかって勝った、という話を、無分別の心かと問われ、正三は、ただ勝つ気迫だと答える。策略を隠したり緻密に計算したりするより、すでに勝っている心で臨むことが勝敗を決める、という見方である。戦国を生きた正三らしい答えだ。計画の細部にこだわるより、揺るがない自信と気迫で臨むことの大切さを示している。
この章句が説くこと
信長家康気迫戦略勝負自信
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