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驢鞍橋 / 卷上

一日若き侍兩人來り、修行の用心を問ふ。師彼に問て曰く、其方達は何役をめさるゝや、時に一人廣間番を仕ると云ふ。師示して曰、狼藉者に於ては縱ひ樊噲張良也とも、八幡通すましと急度ねぢまわして番を作すべし。是れ則ち坐禪也。別に用心有るべからず。亦一人は供番也と云ふ。師示して曰、何者にてもあれうろたへ者、又は逆心の者出來らば、忽ち無手と引組んて指違へんと、急度死を窮め、眼をすゑて供を作すべし。是れ則ち坐禪也。機を抜かして供を成さば、用に立つべからずと也。

新字:一日若き侍両人来り、修行の用心を問ふ。師彼に問て曰く、其方達は何役をめさるゝや、時に一人広間番を仕ると云ふ。師示して曰、狼藉者に於ては縦ひ樊噲張良也とも、八幡通すましと急度ねぢまわして番を作すべし。是れ則ち坐禅也。別に用心有るべからず。亦一人は供番也と云ふ。師示して曰、何者にてもあれうろたへ者、又は逆心の者出来らば、忽ち無手と引組んて指違へんと、急度死を窮め、眼をすゑて供を作すべし。是れ則ち坐禅也。機を抜かして供を成さば、用に立つべからずと也。

書き下し

一日若き侍両人来り、修行の用心を問ふ。師彼に問て曰く、其方達は何役をめさるゝや、時に一人広間番を仕ると云ふ。師示して曰、狼藉者に於ては縦ひ樊噲張良也とも、八幡通すましと急度ねぢまわして番を作すべし。是れ則ち坐禅也。別に用心有るべからず。亦一人は供番也と云ふ。師示して曰、何者にてもあれうろたへ者、又は逆心の者出来らば、忽ち無手と引組んて指違へんと、急度死を窮め、眼をすゑて供を作すべし。是れ則ち坐禅也。機を抜かして供を成さば、用に立つべからずと也。

現代語訳

ある日、若い侍二人が来て、修行の心得を尋ねた。師は彼らに尋ねて言われた。あなたたちは何の役目をされているのか。すると一人は、広間番を務めております、と言った。師は示して言われた。狼藉者に対しては、たとえ樊噲や張良であっても、八幡、通すまいと、きっとねじ回して番をしなさい。これがすなわち坐禅である。別に心得はない。また一人は、供番です、と言った。師は示して言われた。何者であれ、うろたえ者や謀反の心を持った者が出てきたら、たちまち素手で組み付いて刺し違えようと、きっと死を覚悟し、目を据えて供をしなさい。これがすなわち坐禅である。気迫を抜かして供をするなら、役に立たないだろう、と。

解説

修行の心得を尋ねた若い侍たちに、正三はまず役目を聞き、その務めそのものを坐禅だと教える。広間の警護なら、どんな豪傑も通さない気迫で番をせよ。主君の供なら、不審者があればすぐ組み付いて刺し違える覚悟で供をせよ。それが坐禅だ、と。特別な修行を仕事の外に求めるのではなく、今の職務に全身全霊で臨むことが修行になる、という職業即仏行の具体的な示し方である。どんな仕事にも応用できる。

この章句が説くこと

職業即仏行職務坐禅覚悟気迫

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