驢鞍橋 / 卷上
師聞て曰く、扨も能き方便の仕やう哉。是れ貴き人也。亦如是業人菩提心發る事、念佛の功德有難き事也。便ち衆中に向つて曰く、各々も二三年勤めたる處を、千兩にも萬兩にも買はんと云ふ者有りとも、賣らんと云ふ機は有るへからず。然れば亦大なる功德備はる物に非すやと也。
新字:師聞て曰く、扨も能き方便の仕やう哉。是れ貴き人也。亦如是業人菩提心発る事、念仏の功徳有難き事也。便ち衆中に向つて曰く、各々も二三年勤めたる処を、千両にも万両にも買はんと云ふ者有りとも、売らんと云ふ機は有るへからず。然れば亦大なる功徳備はる物に非すやと也。
書き下し
師聞て曰く、扨も能き方便の仕やう哉。是れ貴き人也。亦如是業人菩提心発る事、念仏の功徳有難き事也。便ち衆中に向つて曰く、各々も二三年勤めたる処を、千両にも万両にも買はんと云ふ者有りとも、売らんと云ふ機は有るへからず。然れば亦大なる功徳備はる物に非すやと也。
現代語訳
師は聞いて言われた。なんとも良い方便のやり方だな。これは尊い人である。また、このような業の深い人に菩提心が起こるとは、念仏の功徳はありがたいことだ。そして衆に向かって言われた。皆さんも、二、三年勤めたところを、千両でも万両でも買おうと言う者がいても、売ろうという気持ちはないだろう。それならば、また大きな功徳が備わっているのではないか、と。
解説
老父を念仏に導いた息子の方便を、正三は尊い人だと絶賛する。そして弟子たちに、二、三年の修行を千両万両で買うと言われても売る気はないだろう、それほど大きな功徳がすでに備わっているのだ、と語る。自分が積み重ねてきたものの価値は、お金に換算しようとすると、かえってはっきり見えてくる。日々の努力に手ごたえを感じられないとき、それを誰かに売れるかと自問してみる視点を与えてくれる。
この章句が説くこと
功徳方便積み重ね価値念仏励まし
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