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臨済録 / 示衆

爾一念心歇得處,喚作菩提樹;爾一念心不能歇得處,喚作無明樹。無明無住處、無明無始終,爾若念念心歇不得,便上他無明樹,便入六道、四生、披毛、戴角;爾若歇得,便是清淨身界。爾一念不生,便是上菩提樹,三界神通變化意生化身,法喜禪悅身光自照,思衣羅綺千重、思食百味具足,更無橫病。菩提無住處,是故無得者。

新字:爾一念心歇得処,喚作菩提樹;爾一念心不能歇得処,喚作無明樹。無明無住処、無明無始終,爾若念念心歇不得,便上他無明樹,便入六道、四生、披毛、戴角;爾若歇得,便是清浄身界。爾一念不生,便是上菩提樹,三界神通変化意生化身,法喜禅悦身光自照,思衣羅綺千重、思食百味具足,更無横病。菩提無住処,是故無得者。

書き下し

爾が一念心の歇得する処、喚んで菩提樹と作す。爾が一念心の歇得すること能わざる処、喚んで無明樹と作す。無明に住処無く、無明に始終無し。爾若し念念心歇み得ずんば、便ち他の無明樹に上り、便ち六道四生に入って、毛を披り角を戴く。爾若し歇得せば、便ち是れ清浄身界なり。爾一念生ぜざれば、便ち是れ菩提樹に上り、三界に神通変化し、意生化身し、法喜禅悦して身光自ら照らす。衣を思えば羅綺千重、食を思えば百味具足し、更に横病無し。菩提に住処無し、是の故に得る者無し。

現代語訳

お前たちの一瞬の心が止むところ、それを菩提樹(悟りの木)と呼ぶ。お前たちの一瞬の心が止まないところ、それを無明樹(迷いの木)と呼ぶ。無明にはとどまる場所もなく、始まりも終わりもない。お前たちが一瞬一瞬の心を止められなければ、その無明の木に登り、六道(地獄から天までの六つの迷いの世界)と四生(胎生・卵生・湿生・化生の四つの生まれ方)に入って、毛をかぶり角を生やした獣になる。止めることができれば、そのまま清らかな身の世界である。お前たちに一念も生じなければ、そのまま菩提樹に登り、三界で神通自在に変化し、思いのままの身を現し、法の喜びと禅の悦びにひたって、身の光がおのずから照らす。衣を思えば薄絹が千重にも重なり、食を思えば百の味がそろい、思いがけない病もない。菩提にはとどまる場所がない。だからそれを得る者もいない。

解説

菩提樹と無明樹という二本の木のたとえである。悟りと迷いは別々の場所にある二つの世界ではなく、一瞬の心が止むか止まないかの違いにすぎない。追い求める心が止まなければ迷いの木に登って六道をめぐり、止めば清らかな身の世界にいる。臨済は無明にも住処がないと言い、さらに菩提にも住処がないから得る者もいないと結ぶ。悟りを手に入れる対象と考えた瞬間、それはまた追い求めの的になってしまうからである。仕事で成果を追いかけ続けて心が休まらないとき、足りないのは成果ではなく、追い求める心の止め方かもしれない。止めた瞬間に見えてくる景色があるのである。

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