李衛公問対 / 卷下
譬如奕棊,兩敵均焉,一著或失,竟莫能救。是古今勝敗,率由一誤而已,況多失者乎!
新字:譬如奕棋,両敵均焉,一著或失,竟莫能救。是古今勝敗,率由一誤而已,況多失者乎!
書き下し
譬えば奕棊のごとし。兩敵均しければ、一著或いは失すれば、竟に救う能わず。是れ古今の勝敗、率ね一誤に由るのみ。況んや多く失する者をや。
現代語訳
たとえば碁を打つようなものである。両者の実力が拮抗しているとき、一手でも間違えれば、もはや取り返しがつかない。昔から今に至るまでの勝敗は、おおむねただ一つの誤りによって決まるのであって、まして誤りを重ねる者ならなおさらである。
解説
実力が伯仲した勝負ほど、わずか一つの判断ミスが結果を分けるという鋭い洞察である。互角の状況では取り返しのつくミスなど存在せず、一手の誤りがそのまま形勢を決定づけてしまう。仕事の商談や試験、日々の重要な決断においても、実力差が小さいときほど一つの油断や見落としが命取りになりやすい。誤りを重ねればなおさら挽回は難しくなるため、拮抗した局面ほど一手一手を丁寧に扱う姿勢が求められる。
この章句が説くこと
一手拮抗慎重
関連する章句
-
『墨子』貴義子墨子曰く、今、士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。商人、一布を用うるに、敢えて茍くも繼ぎて讎らず、必ず良き者を擇ぶ。今、士の身を用うるは則ち然らず。意の欲する所は則ち之を為す。厚き者は刑罰に入り、薄き者は毁醜を被る。則ち士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。
-
論語・述而篇子の慎む所は、斉・戦・疾なり。
-
論語・為政篇子張禄を干(もと)むを学ぶ。子曰く、多く聞いて疑わしきを闕(か)き、其の余を慎言すれば、則ち尤(とがめ)寡なし。多く見て殆(あやう)きを闕き、其の余を慎行すれば、則ち悔寡なし。言に尤寡なく、行に悔寡なければ、禄は其の中に在り。
-
孫子・火攻篇故に明主は之を慎み、良将は之を警む。此れ国を安んじ軍を全うするの道なり。
-
老子・第15章古の善く士たる者は、微妙玄通、深くして識るべからず。夫れ唯だ識るべからず、故に強いて之が容を為す。豫として冬に川を渉るが若く、猶として四隣を畏るるが若く、儼としてそれ客の若く、渙として氷の将に釈けんとするが若く、敦としてそれ樸の若く、曠としてそれ谷の若く、混としてそれ濁れるが若し。孰か能く濁りて以て之を静かにして徐ろに清まさん。孰か能く安んじて以て久しく之を動かして徐ろに生ぜん。此の道を保つ者は盈つるを欲せず。夫れ唯だ盈たず、故に能く蔽れて新たに成る。
-
尚書・蔡仲之命小民を康濟するに、率ね中よりし、聰明を作して舊章を亂すこと無かれ。