李衛公問対 / 卷上
善用兵者,無不正,無不奇,使敵莫測。故正亦勝,奇亦勝。三軍之士,止知其勝,莫知其所以勝,非變而能通,安能至是哉?
新字:善用兵者,無不正,無不奇,使敵莫測。故正亦勝,奇亦勝。三軍之士,止知其勝,莫知其所以勝,非変而能通,安能至是哉?
書き下し
兵を善く用うる者は、正ならざる無く、奇ならざる無く、敵をして測ること莫からしむ。故に正も亦た勝ち、奇も亦た勝つ。三軍の士は、止だ其の勝つを知るのみにて、其の勝つ所以を知る莫し。変じて能く通ずるに非ざれば、安んぞ能く是に至らんや。
現代語訳
用兵に巧みな者は、すべてが正であるとも言え、すべてが奇であるとも言えるようにして、敵に見極めさせない。だから正で戦っても勝ち、奇で戦っても勝つ。全軍の兵士たちはただ勝ったという事実を知るだけで、なぜ勝てたのかは知らない。状況に応じて自在に変化し通じさせる力がなければ、どうしてここまで至れるだろうか。
解説
現場の兵士は勝った事実だけを知り、勝因までは知らないという李靖の指摘は、組織における役割分担の本質を突いている。全員が同じ深さで全体像を理解している必要はなく、状況に応じて柔軟に手を変える判断力は、それを担う立場の人間に委ねられているという見方である。日々の仕事でも、結果を出すための工夫のすべてを周囲に説明し尽くす必要はない。ただしその裁量を持つ側には、変化に通じる力量が絶えず求められる。
この章句が説くこと
応用力裁量勝因