礼記 / 楽記
王者:功成作樂,治定制禮。其功大者,其樂備;其治辯者,其禮具。干戚之舞,非備樂也;孰亨而祀,非達禮也。五帝殊時,不相沿樂;三王異世,不相襲禮。樂極則憂,禮粗則偏矣。及夫敦樂而無憂,禮備而不偏者,其唯大聖乎?
新字:王者:功成作楽,治定制礼。其功大者,其楽備;其治弁者,其礼具。干戚之舞,非備楽也;孰亨而祀,非達礼也。五帝殊時,不相沿楽;三王異世,不相襲礼。楽極則憂,礼粗則偏矣。及夫敦楽而無憂,礼備而不偏者,其唯大聖乎?
書き下し
王者は功成りて楽を作り、治定まりて礼を制す。其の功大なる者は其の楽備わり、其の治辯(あまね)き者は其の礼具わる。干戚の舞は、備楽に非ざるなり。孰亨(じゅくほう)して祀るは、達礼に非ざるなり。五帝は時を殊にし、相楽を沿(よ)らず。三王は世を異にし、相礼を襲わず。楽極まれば則ち憂え、礼粗なれば則ち偏る。夫(か)の楽を敦(あつ)くして憂い無く、礼備わりて偏らざる者に及んでは、其れ唯だ大聖か。
現代語訳
王者は、功業が成就してから楽を作り、治世が定まってから礼を制定する。その功業が大きい者ほど楽は完備し、その治世が広く行き渡った者ほど礼は具わる。盾と斧を持つ武の舞だけでは、完備した楽とはいえない。煮た肉を供えて祀るだけでは、行き届いた礼とはいえない。五帝はそれぞれ時代が異なり、互いに前代の楽をそのまま踏襲しなかった。三王は世が異なり、互いに前代の礼をそのまま受け継がなかった。楽が極まりすぎると憂いが生じ、礼が粗略であると偏りが生じる。楽を豊かにしながら憂いがなく、礼を完備しながら偏りがない、そのようなことができるのは、ただ大聖人だけであろうか。
解説
礼楽を制作する時機と、その偏りの危うさを論じた段である。功業が成って楽を作り、治世が定まって礼を制するという順序について、鄭玄は両者は同時のことだとし、『明堂位』が周公について、天下を治めて六年、明堂で諸侯を朝見し、礼を制し楽を作ったと記すのを引く。武の舞だけでは楽が完備せず、煮た肉を供えるだけでは礼が行き届かないのは、鄭玄によれば、楽は文徳を備えてはじめて完成し、礼はもっとも敬う祭りほど味ではなく気や香りを貴ぶからである。五帝や三王が前代の礼楽をそのまま踏襲しなかったのは、時代に応じて損益したからだという。後半の「楽極まれば則ち憂え、礼粗なれば則ち偏る」を鄭玄は、楽の害はおごりにあり、礼の害は怠りにあると読んでいる。楽しみに溺れず、規律をおろそかにしない。その両立がいかに難しいかを、大聖人にしかできないと言って示している。
この章句が説くこと
礼記楽記制礼作楽周公損益
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史記 楽書倫を論じて患ひ無きは、楽の情なり。欣喜驩愛は、楽の容なり。中正にして邪無きは、礼の質なり。荘敬恭順は、礼の制なり。若し夫れ礼楽の金石に施し、声音に越し、宗廟社稷に用ひ、山川鬼神に事ふれば、則ち此れ民と同じくする所以なり。王者は功成りて楽を作り、治定まりて礼を制す。其の功大なる者は其の楽備はり、其の治辨かなる者は其の礼具はる。干戚の舞は、備楽に非ず。亨孰して祀るは、達礼に非ず。五帝は時を殊にし、楽を相沿はず。三王は世を異にし、礼を相襲はず。楽極まれば則ち憂ひ、礼粗なれば則ち偏る。夫の楽を敦くして憂ひ無く、礼備はりて偏らざる者に及んでは、其れ唯大聖か。天は高く地は下り、万物散殊して、礼制行はる。流れて息まず、合同して化して、楽興る。春作り夏長ずるは、仁なり。秋斂め冬蔵するは、義なり。仁は楽に近く、義は礼に近し。楽は和を敦くし、神に率ひて天に従ふ。礼は宜しきを辨じ、鬼に居りて地に従ふ。故に聖人は楽を作りて以て天に応じ、礼を作りて以て地に配す。礼楽明らかに備はりて、天地官す。天尊く地卑しくして、君臣定まる。高卑已に陳なりて、貴賤位す。動静常有りて、小大殊なる。方は類を以て聚まり、物は群を以て分かれ、則ち性命同じからず。天に在りては象を成し、地に在りては形を成す、此くの如くなれば則ち礼とは天地の別なり。地気上り隮り、天気下り降り、陰陽相摩し、天地相蕩し、之を鼓するに雷霆を以てし、之を奮ふに風雨を以てし、之を動かすに四時を以てし、之を煖むるに日月を以てして、百物化し興る、此くの如くなれば則ち楽とは天地の和なり。化時ならざれば則ち生ぜず、男女別無ければ則ち乱登る、此れ天地の情なり。夫の礼楽の天に極まりて地に蟠り、陰陽に行はれて鬼神に通じ、高きを窮め遠きを極めて深厚を測るに及んでは、楽は太始に著れ、礼は成物に居る。
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史記 楽書情を合し貌を飾るは、礼楽の事なり。礼義立てば、則ち貴賤等し。楽文同じければ、則ち上下和す。好悪著らかなれば、則ち賢不肖別る。刑暴を禁じ、爵賢を挙ぐれば、則ち政均し。仁以て之を愛し、義以て之を正す、此くの如くなれば則ち民治行はる。楽は中より出で、礼は外より作る。楽は中より出づ、故に静かなり。礼は外より作る、故に文あり。大楽は必ず易く、大礼は必ず簡なり。楽至れば則ち怨み無く、礼至れば則ち争はず。揖譲して天下を治むるとは、礼楽の謂ひなり。暴民作らず、諸侯賓服し、兵革試みず、五刑用ひず、百姓患ひ無く、天子怒らず、此くの如くなれば則ち楽達す。父子の親しみを合し、長幼の序を明らかにし、以て四海の内を敬せしむ。天子此くの如くなれば、則ち礼行はる。大楽は天地と和を同じくし、大礼は天地と節を同じくす。和す、故に百物失はず。節あり、故に天を祀り地を祭る。明には則ち礼楽有り、幽には則ち鬼神有り、此くの如くなれば則ち四海の内、敬を合し愛を同じくす。礼とは、事を殊にして敬を合する者なり。楽とは、文を異にして愛を合する者なり。礼楽の情同じ、故に明王以て相沿ふ。故に事は時と并び、名は功と偕にす。故に鐘鼓管磬羽籥干戚は、楽の器なり。詘信俯仰級兆舒疾は、楽の文なり。簠簋俎豆制度文章は、礼の器なり。升降上下周旋裼襲は、礼の文なり。故に礼楽の情を知る者は能く作り、礼楽の文を識る者は能く術ぶ。作る者之を聖と謂ひ、術ぶる者之を明と謂ふ。明聖とは、術作の謂ひなり。楽とは、天地の和なり。礼とは、天地の序なり。和す、故に百物皆化す。序あり、故に群物皆別る。楽は天に由りて作り、礼は地を以て制す。制を過ぐれば則ち乱れ、作を過ぐれば則ち暴なり。天地に明らかにして、然る後に能く礼楽を興すなり。
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礼記・楽記大楽は天地と和を同じくし、大礼は天地と節を同じくす。和す、故に百物失わず。節あり、故に天を祀り地を祭る。明なれば則ち礼楽有り、幽なれば則ち鬼神有り。此くの如くなれば、則ち四海の内、敬を合わせ愛を同じくす。礼なる者は、事を殊にして敬を合わする者なり。楽なる者は、文を異にして愛を合わする者なり。礼楽の情同じ、故に明王以て相沿(よ)る。故に事は時と並び、名は功と偕(とも)にす。故に鐘鼓管磬、羽龠(うやく)干戚は、楽の器なり。屈伸俯仰、綴兆(てっちょう)舒疾は、楽の文なり。簠簋(ほき)俎豆、制度文章は、礼の器なり。升降上下、周還(しゅうせん)裼襲(せきしゅう)は、礼の文なり。故に礼楽の情を知る者は能く作り、礼楽の文を識る者は能く述ぶ。作る者を之れ聖と謂い、述ぶる者を之れ明と謂う。明聖なる者は、述作の謂いなり。
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史記 楽書楽なる者は、情の変ずべからざる者なり。礼なる者は、理の易ふべからざる者なり。楽は同を統べ、礼は異を別つ、礼楽の説は人情を貫く。本を窮め変を知るは、楽の情なり。誠を著し偽を去るは、礼の経なり。礼楽は天地の誠に順ひ、神明の徳に達し、上下の神を降興し、而して精粗の体を凝らし、父子君臣の節を領む。是の故に大人礼楽を挙ぐれば、則ち天地将に為に昭らかならんとす。天地欣合し、陰陽相得て、万物を煦嫗覆育し、然る後に草木茂り、区萌達し、羽翮奮ひ、角觡生じ、蟄虫昭穌し、羽ある者は嫗伏し、毛ある者は孕鬻し、胎生する者は殰せずして卵生する者は殈せず、則ち楽の道焉に帰するのみ。楽とは、黄鐘大呂弦歌干揚を謂ふに非ざるなり、楽の末節なり、故に童者之を舞ふ。筵席を布き、樽俎を陳ね、籩豆を列ね、升降を以て礼と為す者は、礼の末節なり、故に有司之を掌る。楽師は声詩を辯ず、故に北面して弦す。宗祝は宗廟の礼を辯ず、故に尸に後る。商祝は喪礼を辯ず、故に主人に後る。是の故に徳成りて上り、芸成りて下る。行ひ成りて先んじ、事成りて後る。是の故に先王は上有り下有り、先有り後有りて、然る後に以て天下に制有るべきなり。楽とは、聖人の楽しむ所なり、而して以て民心を善くすべし。其の人を感ぜしむること深く、其の風を移し俗を易ふ、故に先王其の教へを著す。夫れ人に血気心知の性有りて、哀楽喜怒の常無く、感に応じて物に起こりて動き、然る後に心術形はる。
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