二宮翁夜話 / 続篇
翁曰、真菰を俵に作る、虫喰はざるものなり。木綿を入るゝに用ふべし、塵付かずしてよろし。
書き下し
翁(おきな)曰(いわ)く、真菰(まこも)を俵(たわら)に作る、虫喰(むしくわ)ざるものなり。木綿(もめん)を入るゝに用ふべし、塵(ちり)付かずしてよろし。
現代語訳
翁(二宮尊徳)が言われた。真菰で俵を作ると、虫が食わないものだ。木綿を入れるのに用いるとよい。塵がつかなくて具合がよい。
解説
真菰(水辺に生える草)で作った俵は虫がつかず、木綿の保管に適していて塵もつかない――尊徳が日々の観察から得た、ごく実際的な生活の知恵を記した短い一条です。壮大な思想の合間に、こうした身近な工夫が挟まれるのが『夜話』の魅力でもあります。手近な材料の性質をよく見きわめ、暮らしに役立てる。尊徳の学びが机上の空論ではなく、農村の現場での細やかな観察と実践に根ざしていたことを物語ります。ありふれた草一本にも用途を見出す姿勢は、身の回りの資源を無駄なく活かす報徳の勤労と倹約の精神につながります。小さな工夫の積み重ねが暮らしを豊かにする――現代の私たちにも通じる実学の一端です。
この章句が説くこと
二宮翁夜話報徳実学生活の知恵真菰倹約
関連する章句
-
孫子・行軍篇令素行以教其民,則民服;令素不行以教其民,則民不服。令素行者,與衆相得也。
-
易経・繋辞下古者包犧氏之王天下也,仰則觀象於天,俯則觀法於地,觀鳥獸之文,與地之宜,近取諸身,遠取諸物,於是始作八卦,以通神明之德,以類萬物之情。作結繩而為罔罟,以佃以漁,蓋取諸離。
-
葉隠・聞書第十一敵の強弱の見様、雨後に晴天を見る如く澄み渡るのは弱 敵城の強弱見様、煙霞春山を見るが如く、雨後晴天を見るが如しといへり。澄みわたるは弱なり。
-
五輪書・火の巻景気を見ると云は大分の兵法にして敵の栄え衰へを知り相手の人数の心を知り其場の位を受け敵の景気を能見受け我人数何としかけ此兵法の理にて慥に勝と云所をのみこみて先の位を知て戦所也又一分の兵法も敵のながれを弁へ相手の人柄を見うけ人の強き弱き所を見付け敵の気色にちがふ事をしかけ敵のめりかりを知り其間の拍子を能知りて先をしかくる所肝要也物事の景気と云事は我智力強ければ必見ゆる所也兵法自由の身に成ては敵の心を能計て勝道多かるべき事也工夫有べし
-
呂氏春秋・觀表①凡論人心,觀事傳,不可不熟,不可不深。天為高矣,而日月星辰雲氣雨露未嘗休矣;地為大矣,而水泉草木毛羽裸鱗未嘗息也。凡居於天地之間、六合之內者,其務為相安利也,夫為相害危者,不可勝數。人事皆然。事隨心,心隨欲。欲無度者,其心無度;心無度者,則其所為不可知矣。人之心隱匿難見,淵深難測,故聖人於事志焉。聖人之所以過人以先知,先知必審徵表,無徵表而欲先知,堯、舜與眾人同等。徵雖易,表雖難,聖人則不可以飄矣,眾人則無道至焉。無道至則以為神,以為幸。非神非幸,其數不得不然。郈成子、吳起近之矣。
-
呂氏春秋・有始①天地有始。天微以成,地塞以形。天地合和,生之大經也。以寒暑日月晝夜知之,以殊形殊能異宜說之。夫物合而成,離而生。知合知成,知離知生,則天地平矣。平也者,皆當察其情,處其形。