二宮翁夜話 / 巻之三
翁曰、天下国家、真の利益と云ふものは、尤も利の少き処にある物なり。利の多きは、必ず真利にあらず。家の為土地の為に、利を興さんと思ふ時は、能く思慮を尽すべし。
書き下し
翁(おきな)曰(いわ)く、天下国家、真(しん)の利益(りえき)と云ふものは、尤(もっと)も利の少き処(ところ)にある物なり。利の多きは、必ず真利(しんり)にあらず。家の為(ため)土地の為に、利を興(おこ)さんと思ふ時は、能(よ)く思慮(しりょ)を尽すべし。
現代語訳
翁(二宮尊徳)が言われた。天下国家にとって真の利益というものは、最も利の少ないところにあるものだ。利が多いものは、必ずしも真の利益ではない。家のため土地のために利を興そうと思うときは、よくよく思慮を尽くすべきである。
解説
目先の大きな儲けを疑い、真の利益の在りかを問うた一条です。利幅が大きいものほど、どこかに無理や誰かの損が隠れており、長続きしない――だから真の利益はむしろ「利の少ないところ」にある、と尊徳は説きます。薄くとも堅実で、末永く続き周囲をも潤す利こそが本物なのです。ここには、小さな確かな積み重ねを重んじる「積小為大」の思想が息づいています。家や土地の繁栄を図るなら、うまい話に飛びつかず十分に熟慮せよという戒めは、投機や過大なリターンに惑わされがちな現代の経済判断にもそのまま当てはまります。派手さより堅実さに価値を置く、報徳の実利観を示す一条です。
この章句が説くこと
二宮翁夜話報徳真の利益積小為大堅実思慮
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