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直毘霊 / 言挙せずとは

そをことごとしくいひあぐると、然らぬとのけぢめを思へ、言擧せずとは、あだし國のごと、こちたく言たつることなきを云なり、

新字:そをことごとしくいひあぐると、然らぬとのけぢめを思へ、言挙せずとは、あだし国のごと、こちたく言たつることなきを云なり、

書き下し

そをことごとしく言い挙ぐると、然らぬとのけじめを思え。言挙せずとは、あだし国の如、こちたく言立つることなきを言うなり。

現代語訳

(道があるのに)それを仰々しく言い立てるのと、そうしないのとの違いを考えよ。「言挙げせず」というのは、よその国のように、仰々しく言葉に立てて言うことがないのをいうのである。

解説

「言挙げせぬ国」という古語を、宣長はここで自ら注解する。言挙げせずとは、異国のように仰々しく言い立てないことだ、と。『万葉集』には柿本人麻呂歌集の「葦原の瑞穂の国は神ながら言挙げせぬ国」という歌があり、宣長はこれを日本の古のありようを示す証として重んじた。道があってもそれを事々しく言い上げるか否か、その「けじめ」を思えと言うのは、道がないのではなく、あるのに言わないのだという主張の念押しである。言葉にして掲げることを美徳とする儒学への反論であり、同時に、日本にも道があると無理に言い立てる同時代の学者への批判でもある。大切なことほど言葉にしないほうがよいのは、どんな場面だろうか。

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