宋名臣言行録 / 後集巻十・韓絳
上為逐市易官稍寛二臣者而他相至欲復留故賈人劉佐任市易公固言不可論上前未决公再拜曰臣言不用辱相位請從此辭上愕曰兹小事何爾邪公奏曰小事弗伸况大事乎上為罷佐遣使持手詔諭公使就位公乃起後數月固稱疾出知許州
新字:上為逐市易官稍寛二臣者而他相至欲復留故賈人劉佐任市易公固言不可論上前未決公再拝曰臣言不用辱相位請従此辞上愕曰茲小事何爾邪公奏曰小事弗伸況大事乎上為罷佐遣使持手詔諭公使就位公乃起後数月固称疾出知許州
書き下し
上爲に市易官を逐い、稍ミ二臣を寛やかにす。而して他の相は復た故の賈人劉佐を留めて市易に任ぜんと欲するに至る。公固く不可と言い、上前に論じて未だ决せず。公再拜して曰く、臣の言用いられず相位を辱む。請う、此れより辭せんと。上愕きて曰く、茲れ小事なり。何ぞ爾らんやと。公奏して曰く、小事すら伸びず。况んや大事をやと。上爲に佐を罷め、使を遣わして手詔を持して公に諭し位に就かしむ。公乃ち起つ。後數月、固く疾と稱して出でて許州を知す。
現代語訳
天子はそのために市易官を追い、二人の臣への処置を少し緩めた。ところが他の宰相は、あらためて元の商人である劉佐を留めて市易に任じようとするまでになった。公は固く不可と述べ、天子の前で論じたが決着しなかった。公は二度拝礼して言った。「臣の言葉が用いられず、宰相の位を辱めております。どうか、これより辞させてください」。天子は驚いて言った。「これは小さな事である。どうしてそこまでするのか」。公は奏上して言った。「小さな事すら通りません。まして大きな事はどうでしょうか」。天子はそのために劉佐を罷め、使いを遣わして自筆の詔を持たせて公に諭し、位に就かせた。公はそこで立ち上がった。数か月後、固く病と称して出て許州の知事となった。
解説
商人一人の人事です。天子の受け取り方が、ふつうの感覚でした。**これは小さな事である。どうしてそこまでするのか。**辞職に値しない、と。返しが、小さいことを認めたうえで反転させます。**小さな事すら通りません。まして大きな事はどうでしょうか。**争っているのは案件の重さではなく、通るか通らないかでした。小さい件で通らないなら、大きい件では初めから望みがない。天子は折れました。
この章句が説くこと
他の相は復た故の賈人劉佐を留めて市易に任ぜんと欲するに至る臣の言用いられず相位を辱む請う此れより辞せん茲れ小事なり何ぞ爾らんや小事すら伸びず況んや大事をや辞任小事
関連する章句
-
『宋名臣言行録』後集巻十・韓絳三司使市易官の罪を發く。而して同列之を佑けて責めざらんと欲す。方に賈人の免行錢を創る。孫尚書永議に異なる有り。而して同列永を論じて上を罔きて故らに實あらずと欲す。上書人鄭俠激切にして獄に下る。而して執政馮公京嘗て俠に賙う。同列俠に黨するを以て重坐と爲さんと欲す。公帝前に辨じて直きを得ず、數ミ罷めんことを求む。
-
『宋名臣言行録』後集巻十・韓絳三司使と爲る。内諸司の吏に恩澤を干むる者有り。詔して已に之を許す。公條例を執りて奏禀す。上曰く、朕條例を知らず。當に卿が爲に改むべし。後に此の等の事有らば亦た須らく執奏すべしと。三司の事は多く宮省と相い關わる。近習干請する所有れば即ち條例を語る。公未だ嘗て詭隨せず。
-
『宋名臣言行録』後集巻一・韓琦英宗上僊し、今上即位す。一日、遂に懇ろに位を辭す。上流涕して謂う、相公何くにか之かんと欲すると。公一日、又た四方の士人の退かざるを見責するの書を持し、開陳して以謂えらく、清議容さず。此くの如くんば豈に敢えて位に安んぜんやと。上又た流涕して語らず。請うこと益ミ堅し。他日忽ち宣諭す、已に恩命有りと。云う、亦た久しくは外に在らしめず、席を虚しくして以て待つと。故に兩鎮を除す(鎮安・德勝等軍節度兼侍中・判相州を除す)。衮衣もて還るを待つの語有り。公復た進見して、制の語太だ過ぎて、臣をして外に安んずるを得ざらしむと謂い、之を改めんことを乞う。上許さず。
-
『宋名臣言行録』後集巻一・韓琦英宗力めて辭す。宦官宮妾、勢い未だ便ならず。中外皆之を危ぶむ。公復た啓して曰く、陛下之に屬するに大任を以てして、肯えて當たらざるは、蓋し其の沉遠詳重にして、識慮人に過ぐる有り、他有るに非ざるなり。猶豫して決せざれば、讒慝を招き變故を生ず。且つ名未だ正しからざれば、則ち尚お以て辭するを得。名體一たび定まり、父子の分明らかなれば、則ち浮議も亦た復た搖がすを得ずと。
-
『宋名臣言行録』後集巻十・韓絳公の相に入るは王荊公の後を繼ぐ。政事に未だ便ならざる者有らば、賢士大夫或いは置きて用いず。公將に更易して之を振舉せんとす。奏す、古者冢宰は國用を制す。今天下の財用の出入は宰相乃ち預り聞かずと。始めて局を中書に置き、天下の財用の數を稽考し、入を量りて以て出と爲す。司馬光を援用せんとす。上曰く、吾光に於いて豈に愛しむ所有らんや。顧だ光未だ肯えて來たらざるのみと。
-
『宋名臣言行録』後集巻十・韓絳是に至りて上手札もて之を取る。公具さに錄して以て進む。上學士をして詔を草して訪問せしむ。既に進み入るや、上未だ哀痛惻怛の意を見ざるを以て、手ずから詔藁を定め、密封して公に示し、公をして潤色して進めしめ、以て焉に咨訪す。王荊公條例司を領し、深く公の言を以て然りと爲す。遂に衙前の法を推し廣めて以て它の役に及ぼす。