宋名臣言行録 / 後集巻九・蘇轍
轍奏曰熈寧雇役之法三等人戸並出役錢上戸以家産髙強出錢無藝下戸昔不充役亦遣出錢故此二等人戸不免咨怨至於中等昔既已自差役令又出錢不多雇法之行最為其便
新字:轍奏曰熈寧雇役之法三等人戸並出役銭上戸以家産高強出銭無芸下戸昔不充役亦遣出銭故此二等人戸不免咨怨至於中等昔既已自差役令又出銭不多雇法之行最為其便
書き下し
轍奏して曰く、熙寧雇役の法は三等の人戸並びに役錢を出す。上戸は家産髙強にして錢を出すに藝無し。下戸は昔役に充てられざるに亦た錢を出さしむ。故に此の二等の人戸は咨怨を免れず。中等に至りては昔は既に已に自ら役に差せられ、今又た錢を出すこと多からず。雇法の行わるるは最も其の便と爲す。
現代語訳
蘇轍は奏上して言った。「熙寧の雇役の法は、三つの等級の家がそろって役銭を出す。上等の家は家産が大きいので、銭を出すのに際限がない。下等の家は昔は役に当てられなかったのに、これも銭を出させられる。だからこの二つの等級の家は、不平を免れない。中等に至っては、昔はすでに自分が役に差し出されていたし、いままた出す銭も多くない。雇役の法が行われることは、この層にとって最も都合がよい」。
解説
同じ制度が、層によって別のものになる、という話です。上には際限のない負担、下には新しい負担。**この二つの等級の家は、不平を免れない。**声が上がるのはこの二つです。ところが中間の層だけは違いました。**昔はすでに自分が役に差し出されていたし、いままた出す銭も多くない。**元から重かった人にとっては、軽くなっている。声が大きい層と、実際に助かっている層が違う。
この章句が説くこと
熙寧雇役の法は三等の人戸並びに役銭を出す上戸は家産高強にして銭を出すに芸無し下戸は昔役に充てられざるに亦た銭を出さしむ故に此の二等の人戸は咨怨を免れず中等に至りては雇法の行わるるは最も其の便と為す階層負担
関連する章句
-
『宋名臣言行録』後集巻九・蘇轍雇法を罷行すれば上下二等の忻躍は知る可し。唯だ是れ中等は則ち反って害と爲る。且つ畿縣の中等を以て例せば、役錢を出すこと三貫。若し十年を經れば錢三十貫と爲るのみ。今差法既に行わる。諸縣の手力は最も輕役と爲す。農民の官に在りて日に百錢を使うは最も輕費と爲す。然れども一歳の用は已に三十六貫と爲る。二年役滿つれば費七十餘貫と爲る。役を罷めて歸れば、寛鄉は三年閑なるを得、狹鄉は一歳に及ばず。此を以て之を較ぶれば則ち差役五年の費は雇役十年に倍す。
-
『宋名臣言行録』後集巻九・蘇轍賦役の出づる所は多く中等に在り。此くの如く條目の不便なるは一に非ず。故に天下皆雇役を思いて差役を厭う。今五年なり。則ち臣の所謂、宜しく茲に因りて法を修め民を安んじ國を靖んずるの術と爲すべき者なり。然れども大臣權を恃み過を恥じ、終に肯えて改めず。
-
『宋名臣言行録』後集巻六・王安石獨り役法は新舊差募の二議倶に弊有り。吳蜀の民は雇役を以て便と爲す。公と溫公と皆早く貴く、少く州縣を歴て四方の風俗を周く知る能わず。故に公は雇役を主とし、溫公は差役を主とす。蘇内翰・范忠宣は溫公門下の士なるも、復た差役を以て未だ便ならずと爲す。章子厚は公の門下の士なるも、亦た雇役を以て未だ盡くさずと爲す。三人は賢否同じからずと雖も、皆聰明にして吏治を曉り、兼ねて南北の風俗を知る。其の論ずる所は甚だ公にして、各ミ主とする所に私せず。
-
『宋名臣言行録』後集巻八・吕公著初め温公議す、凡そ役人は皆人を雇いて以て代わるを許さずと。然れども東南及び西蜀の諸路の民に髙貲有り、或いは子弟儒を業とす。皆當に弓手と爲りて賤役を執るべし。既に募代を許さず、甚だ之に苦しむ。公其の弊を聞き、即ち令して一切雇募を聽す。民情大いに悦ぶ。
-
『宋名臣言行録』後集巻九・蘇轍一日介甫一巻の書を出だして曰く、此れ青苗法なり。諸君熟く之を議せよ。不便有らば以て告げよ。疑うこと勿かれと。他日轍之に告げて曰く、錢を以て民に貸し息二分を出さしむるは、本と以て民の困を救うにして利を爲すに非ざるなり。然れども出納の際、吏縁りて姦を爲す。法有りと雖も禁ずる能わず。錢民の手に入れば良民と雖も非理の費用を免れず。其の錢を納むるに及びては富民と雖も限に違うを免れず。此くの如くんば則ち鞭箠必ず用いらる。州縣の事は煩に勝えざらんと。
-
『宋名臣言行録』後集巻十・韓絳公三司に在りし時、議して官戸をして量りて免役錢を出さしめ、兼并の家は田頃を計りて役を承け、唯だ鄉役及び弓手を存するの外は並びに蠲除を與え、單丁・女戸の第一等に在る者も亦た量りて役錢を納れしめんと欲す。其の錢は一切免役錢を以て雇召す。此くの如くんば即ち田を限らずして官戸兼并の家は敢えて制を過ぎて以て利を貪らず。中人は以て田を置きて以て生を爲すを得、品官は必ずしも役に充てられずして無業の民は以て募に應ずるを得ん。