宋名臣言行録 / 後集巻九・蘇轍
一日介甫出一巻書曰此青苗法也諸君熟議之有不便以告勿疑他日轍告之曰以錢貸民使出息二分本以救民之困非為利也然出納之際吏縁為姦雖有法不能禁錢入民手雖良民不免非理費用及其納錢雖富民不免違限如此則鞭箠必用州縣事不勝煩矣
新字:一日介甫出一巻書曰此青苗法也諸君熟議之有不便以告勿疑他日轍告之曰以銭貸民使出息二分本以救民之困非為利也然出納之際吏縁為姦雖有法不能禁銭入民手雖良民不免非理費用及其納銭雖富民不免違限如此則鞭箠必用州県事不勝煩矣
書き下し
一日介甫一巻の書を出だして曰く、此れ青苗法なり。諸君熟く之を議せよ。不便有らば以て告げよ。疑うこと勿かれと。他日轍之に告げて曰く、錢を以て民に貸し息二分を出さしむるは、本と以て民の困を救うにして利を爲すに非ざるなり。然れども出納の際、吏縁りて姦を爲す。法有りと雖も禁ずる能わず。錢民の手に入れば良民と雖も非理の費用を免れず。其の錢を納むるに及びては富民と雖も限に違うを免れず。此くの如くんば則ち鞭箠必ず用いらる。州縣の事は煩に勝えざらんと。
現代語訳
ある日、王安石が一巻の書を出して言った。「これが青苗法である。諸君はよく議論してくれ。不都合があれば知らせよ。遠慮するな」。後日、蘇轍はこれに告げて言った。「銭を民に貸して二分の利息を出させるのは、もともと民の困窮を救うためであって、利を得るためではありません。しかし出し入れの際に、役人はそれにかこつけて不正をします。法があっても禁じきれません。銭が民の手に入れば、まともな民でさえ道理に合わない使い方をせずにいられません。その銭を納める段になれば、富める民でさえ期限に遅れずにいられません。そうなれば鞭と杖が必ず用いられます。州や県の事務は、煩雑さに堪えられなくなるでしょう」。
解説
趣旨は認めています。**もともと民の困窮を救うためであって、利を得るためではありません。**問題にしたのは、そこから先でした。三段に分けています。役人の側で不正が起きる。借りた側は使ってしまう。返す段で期限に間に合わない。**銭が民の手に入れば、まともな民でさえ道理に合わない使い方をせずにいられません。**そして最後が必然として置かれます。**そうなれば鞭と杖が必ず用いられます。**
この章句が説くこと
此れ青苗法なり諸君熟く之を議せよ不便有らば以て告げよ銭を以て民に貸し息二分を出さしむるは本と以て民の困を救うにして利を為すに非ざるなり銭民の手に入れば良民と雖も非理の費用を免れず此くの如くんば則ち鞭箠必ず用いらる貸付運用
関連する章句
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『宋名臣言行録』後集巻六・王安石又た青苗は名に二分の息を取ると雖も、其の實も亦た民間と異なる無し。蓋し小民は既に已むを得ざるに非ずして請う者有り、又た已むを得ざるに非ずして之を用うる者有り。且つ錢千を請うが如きは、或いは州縣の間に親舊に遇わば、須らく酒食の費有るべし。然らずんば亦た須らく小小の不急の物を置くべし。只だ二百錢を使わしむれば已に民間の四分の息に比す可し。又た請納の時の往來の用と官中の門戸の賂遺と、至って少なきも亦た百錢を下らず。況んや又た胥吏追呼の煩わしき有り。貨に非ざれば行われず。而して公家の期限は又た私間と同じからず。而して民の法を畏るる者は債を舉げて以て官に輸するに至る。往往にして此に沿いて遂に産業を破蕩する者は固より多し。此れ害有りて利無き所以なり。
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『宋名臣言行録』後集巻六・王安石公の法を論ずるに因りて云う、青苗・免役も亦た是れ法なり。然れども民に藏むるの道に非ず。青苗の息を取るが如きは多からずと雖も、然れども歳ミ萬緡を散ずれば則ち民の二千緡を奪いて官に入る。既に官に入れば則ち民間は復た得可からず。免役法は民間の錢を取りて人を雇いて官に役せしむ。其の此の錢を得て用うる者は皆州縣市井の人にして鄉民に及ばず。鄉民は惟だ輸するを知りて用うるを得ず。故に鄉民をして多く財に乏しからしむるなり。
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『宋名臣言行録』後集巻六・王安石青苗二分の息は輕しと謂う可し。而して百姓に利を見ざるは何ぞや。今民間の債を舉ぐるは、其の息の少なき者も亦た五七分を須い、多き者は或いは倍す。而して亦た其の害を覺らず。曰く、惟だ其の利輕くして且つ官中は得易し。人は徒だ目前の利を知りて後患を顧みず。是を以て請うを樂しむ。若し民間に債を舉ぐれば則ち利重く、又た百端要勒して之を得ること極めて難し。故に人は已む可きを得ば且く已む。
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『宋名臣言行録』後集巻九・蘇轍㑹ミ河北運判王廣廉召されて事を議す。廣廉嘗て僧牒數千道を度りて本錢と爲さんことを奏乞し、陝西の漕司に於いて私かに青苗法を行う。春に散じて秋に斂む。介甫の意と合す。即ち請いて之を河北に施す。此れより青苗法遂に四方に行わる。
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『宋名臣言行録』後集巻九・蘇轍神宗位を嗣ぎて既に二年なり。治を求むること甚だ急なり。轍書を以て事を言う。即日延和殿に召對せらる。時に介甫新たに幸を得、執政を以て三司條例を領す。上轍を以て之が屬と爲す。敢えて辭せず。介甫急に財利を求めて本を知らず。呂惠卿之が謀主と爲る。轍事を議して牾うこと多し。
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『宋名臣言行録』後集巻一・韓琦今青苗錢を放つに、凡そ春に十千を貸し、半年の内に便ち利二千を納れしむ。秋に再び十千を放ち、年終わりに至りて又た利二千を納れしむ。則ち是れ萬錢を貸る者、遠近の地を問わず、歳に息四千を出さしむるなり。周禮は至遠の地も止だ息二千を出すのみ。今青苗の利を取ること、尚お周禮に過ぐること一倍なり。則ち制置司の言う所、周禮の民に貸して息を取り、分數を立て定むるに比すれば已に多しと爲さず、とは、亦た是れ上聽を欺罔し、且つ天下の人皆辨ずる能わずと謂うなり。