宋名臣言行録 / 後集巻八・吕希哲
公晚居宿州真揚間十餘年衣食不給有至絶糧數日者公處之晏然静坐一室家事一切不問不以毫髮事託州縣其在和州嘗作詩云除却借書沽酒外更無一事擾公私閑居日讀易一爻遍考古今諸儒之說黙坐沉思隨事解釋夜則與子孫評論商確得失久之方罷
新字:公晩居宿州真揚間十余年衣食不給有至絶糧数日者公処之晏然静坐一室家事一切不問不以毫髪事託州県其在和州嘗作詩云除却借書沽酒外更無一事擾公私閑居日読易一爻遍考古今諸儒之説黙坐沈思随事解釈夜則与子孫評論商確得失久之方罷
書き下し
公晩に宿州・眞揚の間に居ること十餘年。衣食給せず、糧を絶つこと數日に至る者有り。公之に處すること晏然として、一室に静坐し家事一切問わず。毫髮の事を以て州縣に託せず。其の和州に在るとき嘗て詩を作りて云う、書を借り酒を沽うを除却するの外、更に一事の公私を擾すもの無しと。閑居して日に易一爻を讀み、遍く古今諸儒の説を考え、默坐沈思し事に隨いて解釋す。夜は則ち子孫と得失を評論商確し、久しくして方に罷む。
現代語訳
公は晩年、宿州と真州・揚州のあいだに住むこと十余年であった。衣食が足りず、食糧が絶えて数日に及ぶこともあった。公はそこに落ち着いて身を置き、一室に静坐して、家の事は一切問わなかった。髪一筋ほどの事も州や県に頼まなかった。和州にいたとき、かつて詩を作って言った。「本を借り酒を買うことを除けば、そのほかに公私を煩わせる用事は一つもない」。静かに暮らして、日ごとに『易』の一爻を読み、あまねく古今の諸儒の説を調べ、黙って坐って深く思い、その事に応じて解釈した。夜は子や孫と得失を論じ合い、久しくしてようやく終えた。
解説
食糧が絶える日がある暮らしを、こう書いています。公はそこに落ち着いて身を置き、一室に静坐して、家の事は一切問わなかった。そして貧しさより先に、しなかったことが記されます。髪一筋ほどの事も州や県に頼まなかった。父は宰相、自分も元は説書です。頼めば通ります。詩の一句が、その状態の名前になっています。本を借り酒を買うことを除けば、そのほかに公私を煩わせる用事は一つもない。日課は一日一爻でした。
この章句が説くこと
公晩に宿州真揚の間に居ること十余年衣食給せず公之に処すること晏然として一室に静坐し家事一切問わず毫髪の事を以て州県に託せず書を借り酒を沽うを除却するの外更に一事の公私を擾すもの無し貧静坐
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『正法眼蔵随聞記』巻六まのあたり見しことは、西川の僧遠方より来れりし故に、所持の物なし、纔に墨二三丁もてり、そのあたひ両三百文、此国の両三十文にあたれるを持て、唐土の紙の下品なる、極めて弱きを買ひとりて、襖ま或は袴などに作てきぬれば、起ち居に破るゝおとして、あさましきをも顧みず、うれへざるなり、或る人の云く、汝郷里にかへりて、道具装束とゝのへよと、答て云く、郷里遠方なり、路次の間に光陰を空ふして、学道の時を失せんことを憂ふと云て、猶更に寒をも愁へずして、学道せしなり、しかある故に、大国にはよき人も出来るなり、
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