宋名臣言行録 / 後集巻八・吕公著
彗星見詔求直言公疏曰陛下有欲治之心而無致治之實者何哉此任事之人負陛下也何以言之士之邪正賢不肖盖素定也今則不然前日舉之以為天下之至賢後日逐之以為天下之至不肖其於人材既反覆而不常則於政事亦乖戾而不審矣陛下獨不察之乎
新字:彗星見詔求直言公疏曰陛下有欲治之心而無致治之実者何哉此任事之人負陛下也何以言之士之邪正賢不肖盖素定也今則不然前日舉之以為天下之至賢後日逐之以為天下之至不肖其於人材既反覆而不常則於政事亦乖戻而不審矣陛下独不察之乎
書き下し
彗星見わる。詔して直言を求む。公疏して曰く、陛下に治めんと欲するの心有りて治を致すの實無き者は何ぞや。此れ事に任ずるの人の陛下に負くなり。何を以て之を言うや。士の邪正・賢不肖は蓋し素より定まるなり。今は則ち然らず。前日は之を舉げて以て天下の至賢と爲し、後日は之を逐いて以て天下の至不肖と爲す。其の人材に於いて既に反覆して常ならざれば、則ち政事に於いても亦た乖戾して審らかならず。陛下獨り之を察せざるかと。
現代語訳
彗星が現れた。詔して率直な言葉を求めた。公は上疏して言った。「陛下に治めようとするお心がありながら、治まる実がないのはなぜでしょうか。これは事に当たる者が陛下に背いているのです。どうしてそう言えるのか。士のよこしまと正しさ、賢と不肖は、そもそもあらかじめ定まっているものです。いまはそうではありません。先日はこれを挙げて天下の至って賢い者とし、後日はこれを追い出して天下の至って愚かな者とする。人材において、すでに反り返って一定しないのであれば、政事においてもまた食い違ってはっきりしないのです。陛下だけがそれをご覧になっていないのですか」。
解説
前の条の実例を、そのまま原理に引き上げた上疏です。士のよこしまと正しさ、賢と不肖は、そもそもあらかじめ定まっているものです。人の中身は、そう頻繁に変わらない。ならば評価が反転したとき、変わったのは評価する側です。先日はこれを挙げて天下の至って賢い者とし、後日はこれを追い出して天下の至って愚かな者とする。そして人事の乱れが政事の乱れに直結すると言い切りました。人材において一定しないのであれば、政事においてもまた食い違ってはっきりしない。
この章句が説くこと
陛下に治めんと欲するの心有りて治を致すの実無き者は何ぞや士の邪正賢不肖は蓋し素より定まるなり前日は之を舉げて以て天下の至賢と為し後日は之を逐いて以て天下の至不肖と為す其の人材に於いて既に反覆して常ならざれば則ち政事に於いても亦た乖戻して審らかならず人物一貫
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