宋名臣言行録 / 後集巻六・王安石
公在上前爭論或為上所疑則曰臣之素行亦不至無亷恥如何不足信且論事當問事之是非利害如何豈可以素有亷恥刼人使信已也夫亷恥在常人無足道若君子更自矜其亷恥亦淺矣葢亷恥自君子所當為者如人守官曰我固不受贓不受贓豈分外事乎
新字:公在上前争論或為上所疑則曰臣之素行亦不至無亷恥如何不足信且論事当問事之是非利害如何豈可以素有亷恥刼人使信已也夫亷恥在常人無足道若君子更自矜其亷恥亦浅矣葢亷恥自君子所当為者如人守官曰我固不受贓不受贓豈分外事乎
書き下し
公上前に在りて爭論し、或いは上の疑う所と爲れば則ち曰く、臣の素行も亦た亷恥無きに至らず。如何ぞ信ずるに足らざるやと。且つ事を論ずるは當に事の是非利害の如何を問うべし。豈に素より亷恥有るを以て人を刧かして己を信ぜしむ可けんや。夫れ亷恥は常人に在りては道うに足る無し。若し君子にして更に自ら其の亷恥を矜らば亦た淺し。蓋し亷恥は自ら君子の當に爲すべき所の者なり。人の官を守るに、我固より贓を受けずと曰うが如し。贓を受けざるは豈に分外の事ならんや。
現代語訳
王安石は天子の前で論じ争い、天子に疑われることがあると、こう言った。「臣の日ごろの行いも、廉恥がないというほどではありません。どうして信じるに足りないのでしょうか」。そもそも事を論じるには、その事の是非と利害がどうかを問うべきである。どうして日ごろ廉恥があることをもって、人を脅して自分を信じさせてよいものか。そもそも廉恥は、普通の人にあっては取り立てて言うほどのことではない。まして君子でありながら、自ら廉恥を誇るなら、それも浅い。思うに廉恥は、もともと君子が当然なすべきところのものである。人が官職を守るのに「私はもとより賄賂を受け取らない」と言うようなものだ。賄賂を受け取らないのが、どうして分に過ぎたことであろうか。
解説
議論が行き詰まったときに、自分の潔白を持ち出す。その手を批判した条です。**事を論じるには、その事の是非と利害がどうかを問うべきである。どうして日ごろ廉恥があることをもって、人を脅して自分を信じさせてよいものか。**論点が、事から人へすり替わっています。そして潔白そのものの価値も切り下げました。**廉恥は、もともと君子が当然なすべきところのものである。****賄賂を受け取らないのが、どうして分に過ぎたことであろうか。**
この章句が説くこと
臣の素行も亦た亷恥無きに至らず如何ぞ信ずるに足らざるや事を論ずるは当に事の是非利害の如何を問うべし豈に素より亷恥有るを以て人を刧かして己を信ぜしむ可けんや贓を受けざるは豈に分外の事ならんや潔白論点
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