宋名臣言行録 / 後集巻四・劉敞
是嵗將親大祫於太廟丞相欲加上尊號公以禮部兼領名表丞相請撰表公説止之曰陛下自寳元以來不受徽號至今且二十年天下之人莫不知天子持盈好謙今復加數字既不足盡聖徳而前美並棄誠亦可惜願加深思富丞相不怡曰適已奏聞乃是上意欲爾不可止也公曰諾退謂子弟曰吾備位近臣當獻可替否寜得罪權門豈可使主上受虚名而棄實美耶
新字:是歳将親大祫於太廟丞相欲加上尊号公以礼部兼領名表丞相請撰表公説止之曰陛下自寳元以来不受徽号至今且二十年天下之人莫不知天子持盈好謙今復加数字既不足尽聖徳而前美並棄誠亦可惜願加深思富丞相不怡曰適已奏聞乃是上意欲爾不可止也公曰諾退謂子弟曰吾備位近臣当献可替否寜得罪権門豈可使主上受虚名而棄実美耶
書き下し
是の歳、將に親しく太廟に大祫せんとす。丞相上に尊號を加えんと欲す。公禮部を以て名表を兼領す。丞相表を撰せんことを請う。公説きて之を止めて曰く、陛下は寶元以來徽號を受けず、今に至りて且に二十年ならんとす。天下の人、天子の盈を持し謙を好むを知らざる莫し。今復た數字を加うるも、既に聖德を盡くすに足らずして、前美並び棄てらる。誠に亦た惜しむ可し。願わくは深く思いを加えよと。富丞相怡ばずして曰く、適ま已に奏聞せり。乃ち是れ上の意の爾らんと欲するなり。止む可からずと。公曰く、諾と。退きて子弟に謂いて曰く、吾近臣に位を備う。當に可を獻じ否を替うべし。寧ろ權門に罪を得るとも、豈に主上をして虚名を受けて實美を棄てしむ可けんやと。
現代語訳
その年、天子が自ら太廟で大祫を行おうとしていた。丞相は天子に尊号を加えようとした。劉敞は礼部として名表を兼ね担当していた。丞相はその表を書くよう求めた。劉敞は説いてこれを止めようとして言った。「陛下は宝元以来、称号をお受けにならず、いまで二十年になろうとしています。天下の人で、天子が満ちるを慎み謙を好まれることを知らぬ者はありません。いままた数文字を加えても、聖なる徳を尽くすには足りず、それでいて以前の美点まで一緒に棄てられます。まことに惜しむべきことです。どうか深くお考えください」。富弼は不機嫌になって言った。「たまたますでに奏上してある。これは天子の意がそうしたいということだ。やめるわけにいかない」。劉敞は「承知しました」と言った。退がってから子弟に言った。「私は天子の近くに仕える身である。良いことは献じ、良くないことは改めさせるべきだ。むしろ権勢ある家に罪を得ようとも、どうして主上に虚名を受けさせて実の美点を棄てさせてよいものか」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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葉隠・聞書第一或人(あるひと)覚悟の体(てい)覚書に、主君の身辺(しんぺん)勤むる者は別けて身持(みもち)覚悟慎むべきことなり。御側(おそば)の者の様子を見て、主人のたけを人が積(つも)るものなり。今は御機嫌悪し、序(つい)でになどと思うて居る内に、不図(ふと)御誤(おんあやまり)もあるべきことなり。又諫言(かんげん)は時を移さず申し上ぐべきことなり。仰せ出(いで)済みて後も、其の者に理を附け、少しづつもよき様に云いなせば、帰参(きさん)も早きものなり。又仕合せ(しあわせ)よき人には、無音(ぶいん)しても苦しからず、侍の義理なり。又科人(とがにん)をわろく云うは不義理の事なり。落ちぶれたる者には随分不憫(ふびん)を加え、何とぞ立ち直す様に致すべきこと、侍の義理なりと、これあり候。
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葉隠・聞書第一御縁組(ごえんぐみ)の時、何某(なにがし)一分(いちぶん)を申し達し候。この事、若き衆(しゅう)よく心得(こころえ)置くべき事なり。その身(み)気味(きみ)よく思うて、云(い)ふべき事を云うて腹切(はらき)りても本望(ほんもう)と思ふべし。よくよく了簡(りょうけん)候へ、何の益(えき)にも立たぬ事なり。我(われ)かやうの事を云うて腹切りても本望と思ふは、なるほど聞(きこ)えたり。曲者(くせもの)などと思ふは以(もっ)ての外(ほか)なる取違(とりちが)ひなり。まづ申し出でたる事その詮(せん)なく、我が身は引き取り、御養育(ごよういく)も仕(つかまつ)らず、追付(おっつ)け御死去(ごしきょ)なされ候に、御看病(ごかんびょう)も仕らず、残念千万(ざんねんせんばん)なり。気過(きす)ぎなる人は多分(たぶん)誤(あやま)る所なり。総(そう)じてその位(くらい)に至らずして諫言(かんげん)するは却(かえ)つて不忠(ふちゅう)なり。誠(まこと)の者ならば、我が存(ぞん)じ寄りたる事を似合(にあ)ひたる人に潜(ひそ)かに内談(ないだん)して、その人の思ひ寄りにさせて云へば、その事調(ととの)はるなり。これ忠節(ちゅうせつ)なり。もし、内談にてその人請(う)け合はずば、また外(ほか)の人にも内談し、とかく色々心遣(こころづか)ひをして、その事さへ調はるる様にすれば、大忠節(だいちゅうせつ)も知れぬ様にして居るものなり。幾人(いくにん)に内談しても、埒(らち)明かざる時は力に及ばず、その分(ぶん)にて打ち過ぎ、または起こし立て起こし立てすれば、多分叶(かな)ふものなり。我こそ曲者と云はるる名聞(みょうもん)ばかりにて、我が手柄(てがら)にするゆゑ調はざるなり。申し出でたる事益には立たず、人に難(なん)ぜられ、我が身を崩(くず)したる人数多(あまた)これあるなり。畢竟(ひっきょう)真(しん)の志(こころざし)なきゆゑなり。我が身を一向(いっこう)に捨て捨てて、主君の上(うえ)どうなりとも好き様にとさへ思へば、紛(まぎ)るる事はこれなく候なり。
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葉隠・聞書第一主人に諫言(かんげん)をするに色々あるべし。志(こころざし)の諫言は、脇(わき)に知れぬ様にするなり。御気(おんき)にさからわぬ様にして御癖(おんくせ)を直し申すものなり。細川頼之(ほそかわよりゆき)が忠義などなり。昔、御道中にて、御年寄(おとしより)何某(なにがし)承り、「某(それがし)、一命を捨てて申し上ぐべく候。段々御延引(ごえんいん)の上に脇寄(わきよ)りなど遊ばされ候節(せつ)、以ての外(ほか)然(しか)るべからず候。」と、諸人(しょにん)に向かい、「御暇乞(おいとまごい)仕り候。」と詞(ことば)を渡し、行水(ぎょうずい)、白帷子(しろかたびら)下着(したぎ)にて御前(ごぜん)へ罷出(まかりい)でられ、追付(おっつけ)退出、また諸人に向かい、「拙者(せっしゃ)申し上げ候儀、聞召(きこしめ)し分けられ本望至極(ほんもうしごく)、皆様へ一度御目に懸(かか)り候儀、不思議の仕合(しあわ)せ。」など広言(こうげん)申され候。これ皆、主人の非を顕(あらわ)し、我が忠を揚げ、威勢(いせい)を立つる仕事なり。多分、他国者(たこくもの)にこれあるなり。
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葉隠・聞書第一諫言(かんげん)の道に、我(われ)其の位(くらい)にあらずば、其の位の人に言はせて、御誤(おあやまり)直(なお)る様にするが大忠(たいちゅう)なり。此の階(かい)の為に諸人(しょにん)と懇意(こんい)する所なり。我が為にすれば追従(ついしょう)なり。一方(いっぽう)は我等(われら)荷(にな)ひ申す心入(こころいれ)からなり。成程(なるほど)なるものなり。
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荀子・大略篇人の臣下たる者は、諫むること有るも訕ること無く、亡ること有るも疾むこと無く、怨むこと有るも怒ること無し。
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尚書・皐陶謨予(われ)違(たが)わば、汝(なんじ)弼(たす)けよ。汝、面従(めんじゅう)することなく、退(しりぞ)きて後言(こうげん)あることなかれ。