宋名臣言行録 / 後集巻三・張方平
知陳州時方置條例司行新法率欲以豊財而强兵公因陛辭極論其害皆深言危語曰水所以載舟亦所以覆舟兵猶火也不戢當自焚若行新法不巳其極必有覆舟自焚之憂上雅敬公不甚其言曰能少留乎曰退即行矣上亦悵然
新字:知陳州時方置条例司行新法率欲以豊財而强兵公因陛辞極論其害皆深言危語曰水所以載舟亦所以覆舟兵猶火也不戢当自焚若行新法不巳其極必有覆舟自焚之憂上雅敬公不甚其言曰能少留乎曰退即行矣上亦悵然
書き下し
陳州を知る時、方に條例司を置きて新法を行い、率ね財を豐かにして兵を強くせんと欲す。公陛辭に因りて極めて其の害を論ず。皆深言危語なり。曰く、水は舟を載する所以にして、亦た舟を覆す所以なり。兵は猶お火のごとし。戢めずんば當に自ら焚くべし。若し新法を行いて已まずんば、其の極は必ず覆舟自焚の憂い有らんと。上雅ミ公を敬し、其の言を甚だしとせずして曰く、少しく留まる能わんかと。曰く、退けば即ち行かんと。上も亦た悵然たり。
現代語訳
陳州の知事であったとき、ちょうど条例司を置いて新法を行い、おおむね財を豊かにして兵を強くしようとしていた。張方平は天子に別れを告げる折に、徹底してその害を論じた。どれも思い切った、危うい言葉であった。こう言った。「水は舟を載せるものであると同時に、舟をくつがえすものでもあります。兵は火のようなものです。収めなければ、自分を焼くことになります。もし新法を行ってやめないなら、その果てには必ず、舟がくつがえり自らを焼く憂いがございます」。天子は日ごろ張方平を敬っており、その言葉を行き過ぎとはせずに言った。「少し留まってはくれないか」。「退出したら、すぐに発ちます」。天子もまた寂しげであった。
解説
新法の目的は、財を豊かにし兵を強くすることでした。反対の仕方が、二つの比喩です。**水は舟を載せるものであると同時に、舟をくつがえすものでもあります。**財の話です。同じものが支えにも転覆にもなる。**兵は火のようなものです。収めなければ、自分を焼くことになります。**強めた力の行き先を言っています。そして別れの場面が短い。**少し留まってはくれないか。****退出したら、すぐに発ちます。**引き止めた側も、去る側も、それ以上言葉を継いでいません。
この章句が説くこと
方に条例司を置きて新法を行い率ね財を豊かにして兵を強くせんと欲す水は舟を載する所以にして亦た舟を覆す所以なり兵は猶お火のごとし戢めずんば当に自ら焚くべし其の極は必ず覆舟自焚の憂い有らん危険新法
関連する章句
-
孫子・地形篇夫れ勢均しきに、一を以て十を撃つを、走と曰う。卒強く吏弱きを、弛と曰う。吏強く卒弱きを、陥と曰う。大吏怒りて服せず、敵に遇いて懟みて自ら戦い、将其の能を知らざるを、崩と曰う。将弱くして厳ならず、教道明らかならず、吏卒常無く、兵を陳ぬること縦横なるを、乱と曰う。将敵を料る能わず、少を以て衆に合い、弱を以て強を撃ち、兵に選鋒無きを、北と曰う。凡そ此の六者は、敗の道なり。将の至任、察せざるべからず。
-
論語・衛霊公篇子曰く、民の仁に於けるや、水火よりも甚だし。水火は、吾蹈みて死する者を見たり。未だ仁を蹈みて死する者を見ざるなり。
-
『塩鉄論』褒賢篇文學曰く、蘇秦は從を以て趙に顯れ、張儀は橫を以て秦に任ぜらる、此の時に方たりて、尊貴ならざるに非ざるなり、然れども智士は隨いて之を憂う、夫の道を以て進まざる者は必ず道を以て退かず、義を以て得ざる者は必ず義を以て亡びざるを知ればなり。季・孟の權、三桓の富は、及ぶべからざるなり、孔子之が為に『微』と曰う。人臣為りて、權は君に均しく、富は國に侔しき者は、亡ぶ。故に其の位いよいよ高くして罪いよいよ重く、祿ますます厚くして罪ますます多し。夫れ行う者は先ず己を全くして後に名を求め、仕うる者は先ず害を辟けて後に祿を求む。故に香餌は美ならざるに非ざるなり、龜龍は聞きて深く藏れ、鸞鳳は見て高く逝る者は、其の身を害するを知ればなり。夫れ烏鵲魚鱉と為りて、香餌を食らいて後に狂飛奔走し、頭を遜げ遰を屈するも、死に益無し。今有司は盜みて國法を秉り、進みて罪を顧みず、卒然として急有り、然る後に車馳せ入り趨るも、死に益無し。盜む所は臧獲に償うに足らず、妻子は奔亡して處る所無く、身は深牢に在り、恤み視るを知る莫し。此の時に方たりて、何ぞ暇ありて以て笑うを得んや。
-
戦国策・謂公叔曰乘舟公叔に謂いて曰く、「舟に乘るに、舟漏れて塞がざれば、則ち舟沈まん。漏舟を塞ぎて、陽侯の波を輕んずれば、則ち舟覆らん。今公自ら薛公に辯ずるを以て秦を輕んずるは、是れ漏舟を塞ぎて陽侯の波を輕んずるなり、願わくは公之を察せよ。」
-
人物志・九徵猶ほ火日の外を照らして、內を見る能はず、金水の內に映じて、外に光る能はざるがごとし。
-
説苑・善說客梁王に謂いて曰く、「惠子の事を言うや譬を善くす。王をして譬うる無からしめば、則ち言うこと能わじ。」王曰く、「諾。」明日見えて惠子に謂いて曰く、「願わくは先生の事を言うは則ち直言せよ、譬うる無かれ。」惠子曰く、「今此こに人有りて彈を知らざるに、『彈の狀は何の若きか』と曰わば、應えて『彈の狀は彈の如し』と曰わば、諭らんか。」王曰く、「未だ諭らざるなり。」「是に於て更に應えて『彈の狀は弓の如くにして竹を以て弦と爲す』と曰わば、則ち知らんか。」王曰く、「知るべし。」惠子曰く、「夫れ說く者は固より其の知る所を以て、其の知らざる所を諭し、人をして之を知らしむ。今王『譬うる無かれ』と曰わば、則ち不可なり。」王曰く、「善し。」