宋名臣言行録 / 後集巻二・富弼
公為相及判河陽最後請老家居凡三上章皆言天子無職事惟辨君子小人而進退之此天子之職也君子與小人並處其勢必不勝君子不勝則奉身而退小人不勝則交結搆扇千岐萬轍必勝而後已小人復勝必肆毒於善良無所不為求天下不亂不可得也
新字:公為相及判河陽最後請老家居凡三上章皆言天子無職事惟弁君子小人而進退之此天子之職也君子与小人並処其勢必不勝君子不勝則奉身而退小人不勝則交結搆扇千岐万轍必勝而後已小人復勝必肆毒於善良無所不為求天下不乱不可得也
書き下し
公相と爲り、及び河陽を判し、最後に老を請いて家居するまで、凡そ三たび章を上る。皆言う、天子に職事無し。惟だ君子小人を辨じて之を進退す。此れ天子の職なり。君子と小人と並び處らば、其の勢い必ず勝たず。君子勝たずんば則ち身を奉じて退く。小人勝たずんば則ち交結構扇し、千岐萬轍、必ず勝ちて而る後に已む。小人復た勝たば、必ず毒を善良に肆にし、爲さざる所無し。天下の亂れざるを求むるも得可からざるなりと。
現代語訳
富弼は宰相であったとき、河陽の長官であったとき、そして最後に老いを理由に退いて家に居るまで、合わせて三度上奏した。いずれもこう言った。「天子に職務というものはない。ただ君子と小人を見分けて、進めたり退けたりする。これが天子の職である。君子と小人が並び立てば、その勢いでは必ず勝てない。君子は勝てなければ身を持して退く。小人は勝てなければ、結びつき仕掛け煽り、千の分かれ道、万の轍を使って、必ず勝ってからやめる。小人がまた勝てば、必ず善良な者に毒をほしいままにし、しないことがない。天下が乱れないようにと求めても、得られはしない」。
解説
富弼が生涯に三度、同じことを上奏しました。天子の仕事はただ一つだ、という定義から始まります。天子に職務というものはない。ただ君子と小人を見分けて、進めたり退けたりする。そして、なぜ放っておくと必ず一方が勝つのかを説明しました。君子は勝てなければ身を持して退く。小人は勝てなければ、結びつき仕掛け煽り、千の分かれ道、万の轍を使って、必ず勝ってからやめる。負けたときの粘りが違うので、勝負は時間が決める。だから天子が手を入れるしかない、という結論になります。
この章句が説くこと
天子に職事無し惟だ君子小人を弁じて之を進退す此れ天子の職なり君子と小人と並び処らば其の勢い必ず勝たず君子勝たずんば則ち身を奉じて退く小人勝たずんば則ち交結構扇し千岐万轍必ず勝ちて而る後に已む君子小人
関連する章句
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論語・学而篇子曰く、「君子は食らうに飽くことを求めず、居るに安きを求めず、事に敏にして言に慎み、有道に就いて正す。学を好むと謂う可きのみ。」
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『酔古堂剣掃』集醒・五更の頭に撿點す自家の是れ君子か小人かを知らんと要せば、只だ五更の頭に於いて撿點し、思想する的是れ甚麼なるかを便ち見得ん。
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『慎思録』巻之五唯君子のみ能く君子と小人とを知る。小人は君子の心を知ること能はず。反りて猜疑疾悪し、動もすれば妨害を為し、終に枉冤陥殺するに至る者も、亦之れ有り。且つ小人は小人の害を為すを察せず、引き進めて己の助けと為し、終に其の身を亡ぼすに至りて悟らず。至愚にして暁すべからずと謂ふべし。
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『翁問答』下卷之本聖人の才徳天地神明とおなじき故に、神明不測広大周備、言語道断なり、賢人の才徳も大かた聖人の体段そなはりぬれども、神明不測の位にいたらず、英雄は大将の才徳は賢人と同じけれども、余の才と徳とは賢人より一位おとりて英雄のかどあるなり、聖人賢人英雄この三人は、才徳の高下大小ありと雖、いづれも君子なれば治世にも乱世にも天下無双の重宝なる人なり、奸雄は敵を退治する一科の用に立つ事は賢人英雄にもおとらねども、明徳くらく邪欲ふかき故、むほん逆心の疑ひありて、味方のたのみあやうし、さて国治まりて仕置などまかせぬれば国をみだり、乱をおこすものなり、
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